宅建業者にとって、最も重要な業務であり、最も重い義務と言っても過言ではない「重要事項説明」について、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説いたします。

宅建業者とは

宅建業者とは、宅地建物取引業を営む者を言います。
そして、宅地建物取引業とは、「宅地建物取引業法」という法律で規定されています。
宅地建物取引業第2条第2号、第3号は、次のような定義規定を置いています。

第二条
二 宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
三 宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。

ここからわかる通り、宅地建物取引業とは、
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買
宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の交換
宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理
宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の媒介
をする行為で業として行うこと
ということになり、宅建業者と、これらの業務を営む者、ということになります。

宅建業者の義務

宅建業者が義務を負う理由

宅建業者は、宅地建物取引の専門家ですので、取引条件やさまざまな制限について、調査することができます。
このため、宅地建物取引をするにあたっては、専門家としての様々な義務を負うことになります。

宅建業者が負う義務

宅建業者が負う義務の例としては、次のようなものがあります。
・誠実に取引を行う義務
・自己が取引の当事者なのか、代理人なのか、媒介なのかを明示する義務
・媒介契約書の作成、交付義務
・契約締結前に、宅地建物取引士が、書面を交付して重要事項を説明する義務
・契約が成立した場合の書面交付義務

宅建業者の重要事項説明義務

なぜ、宅建業者の重要事項説明義務は重要か

これは、一言で言えば、最もトラブルが起こりやすたいと言いうるためです。
重要事項説明がなされていたか、重要事項説明書に記載されているか、重要事項説明書に記載されている内容で重要事項説明がなされたと言えるか、当事務所には、様々な相談が寄せられます。
こうした相談が寄せられるのは、それだけ、重要事項説明に関係するトラブルが多いことを意味しています。
従いまして、宅建業者の重要事項説明義務は、非常に重要なのです。

重要事項説明書の交付義務と説明義務

宅建業法35条は、宅建業者の重要事項説明書の交付と説明義務について、次のように定めています。

(重要事項の説明等)
第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
三 当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項
四 飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
五 当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
六 当該建物が建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第二条第一項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第四項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で契約内容の別に応じて国土交通省令・内閣府令で定めるもの
六の二 当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項
イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要
ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況
七 代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的
八 契約の解除に関する事項
九 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
十 第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要
十一 支払金又は預り金(宅地建物取引業者の相手方等からその取引の対象となる宅地又は建物に関し受領する代金、交換差金、借賃その他の金銭(第四十一条第一項又は第四十一条の二第一項の規定により保全の措置が講ぜられている手付金等を除く。)であつて国土交通省令・内閣府令で定めるものをいう。第六十四条の三第二項第一号において同じ。)を受領しようとする場合において、同号の規定による保証の措置その他国土交通省令・内閣府令で定める保全措置を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十二 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十三 当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
十四 その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して、次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める命令で定める事項
イ 事業を営む場合以外の場合において宅地又は建物を買い、又は借りようとする個人である宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護に資する事項を定める場合 国土交通省令・内閣府令
ロ イに規定する事項以外の事項を定める場合 国土交通省令

この中で特に注意が必要なのは、法令上の制限です。
不動産を利用するにあたっては、都市計画法、建築基準法などの各法規に従う必要があるほか、場合によっては、条例などで制限されることもあります。
従って、宅建業者は、各法規の他、条例などまで確認することが必要になります。

重要事項説明義務違反

もし、宅建業者が重要事項説明義務に違反してしまった場合にはどうなるのでしょうか。

行政処分

指示処分、業務停止処分、取消処分などが考えられるため、業務継続が困難になってしまう場合があります。

民事上の責任

重要事項説明義務違反により損害が生じた場合には、民事上の損害賠償責任を負う場合があります。
また、民事上の責任が発生する場合として注意しなければいけないのは、宅建業法35条の重要事項説明義務だけを尽くしていればよいというわけではないという点です。
宅建業者として調査、説明すべき事項とされるものについてこれを欠いた場合には、調査義務違反や説明義務違反として、民事上の賠償責任を負う場合があることに注意が必要です。

宅建業者の重要事項説明義務と弁護士

これまで見てきました通り、宅地建物取引業は宅地及び建物の取引を業とし、宅地建物取引士は専門家として、宅地及び建物の取引に深い知識を有しています。
そして、その高い専門性を持つがゆえに、宅建業者には重要事項説明義務が課されています。
それでは、弁護士が、宅地建物取引に際して重要事項説明義務に関与する場面はあるのでしょうか。

もちろん、弁護士は、宅地建物取引業を行うこともできませんし、宅地建物取引士の業務を行うこともできません。
しかし、宅地建物取引、すなわち、不動産取引の契約を行う際には、宅地または建物に関する法令以外にも、さまざまな契約上の制約や条件が付される場合があります。重要事項説明に際しては、こうした様々な契約上の制約や条件を、正確に、漏れなく記載し、説明することが必要になります。
ご存知の通り、弁護士は、宅地建物取引に限らず法律一般の専門家です。
宅地建物取引の契約をする際には、弁護士が重要事項説明を監修することで、重要事項説明義務に関するトラブルを避けることが可能になる場面は多いと思われます。

宅建業者の重要事項説明義務とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、宅地建物取引主任者試験(当時)に合格した弁護士も在席しています。
埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰しています。
顧問会社様やアネットクラブの会員様からは、重要事項説明に関する多数の相談を受けています。

アネットクラブとは

アネットクラブとは、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が主催する、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とするクラブです。
アネットクラブの会員からの法律相談をお受けしている他、アネットクラブ会員様のお客様の来所法律相談も初回無料としています。

ご相談 ご質問
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
宅地建物取引業者の皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の顧問契約締結や、アネットクラブへのご加入をご検討ください。
不動産案件・相談に精通した弁護士が回答いたします。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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