株価算定方法(参考)

1 純資産方式

(1)簿価純資産法
  簿価純資産額÷発行済株式総数

(2)修正簿価純資産法
  含み損益を加味した簿価純資産額÷発行済株式総数

(3)時価純資産法
  時価純資産額÷発行済株式総数

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非公開会社(都市交通株式会社)において、代表取締役が株主総会の特別決議を経ないで株主以外の者に対し特に有利な発行価格で新株を発行した任務違背があるとして株主から損害賠償請求がされた事件(東京地判昭和56年6月12日・判タ453号161頁)
● 株式譲渡制限のある非公開会社(東洋シュランク株式会社)において、第三者に対する有利な新株発行につき手続を経ずに行ったとして、株主から損害賠償請求がされた事件(東京地判平成4年9月1日・判タ831号202頁)

2 配当還元方式

(1)配当還元法
  (将来予測される年間配当額÷資本還元率)÷発行済株式総数

(2)ゴードン・モデル法
  将来予測される年間配当金÷(資本還元率−投資利益率×内部留保率)÷発行済株式総数

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非上場会社(株式会社ダスキン)において、少数派株主の譲渡承認請求を会社が承諾せず、株主が株式買取請求権を行使したものの、株主と指定買受人との間の協議が整わず、株式買取価格の決定が申し立てられた事件(大阪高決平成1年3月28日・判例時報1324号140頁)

3 収益方式

(1)収益還元法
(将来予測される単年度の税引後純利益÷資本還元率)÷発行済株式総数

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非上場会社(デジタルコンテンツ配信事業)において、株主の譲渡承認請求を会社が承諾せず、他の株主が買受人に指定されたところ、買取価格について合意に至らなかったため、売買価格の決定が求められた事件(東京高決平成20年4月4日・判例タイムズ1284号273頁)

(2) DCF法
   将来予測される年度別収益を現在価値に割引いた合計÷発行済株式総数

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非上場会社において、株主の譲渡承認請求を会社が承諾せず、会社自らが買い受けることとしたが、買取価格について合意に至らなかったため、裁判所に売買価格の決定が求められた事件(広島地決平成21年4月22日・金融商事判例1320号49頁)
● 会社法施行前の商法第245条の5に基づき、事業譲渡(営業譲渡)の株主総会での承認に反対した株主が株式買取請求権を行使したものの、会社との協議が整わず、株式買取価格(「営業ノ重要ナル一部ノ譲渡ニ係ル契約ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」)の決定が申し立てられた事件(いわゆるカネボウ株式買取価格決定申立事件)(東京高決平成22年5月24日・金融商事判例1345号12頁)

4 比準方式

A×〔(b÷B)+(c÷C)×3+(d÷D)〕÷5×斟酌率
A:類似業種に属する会社の平均株価
b:被評価会社の1株当たりの配当金額 B:類似業種に属する会社の1株当たりの配当金額
c:被評価会社の1株当たりの利益金額 C:類似業種に属する会社の1株当たりの利益金額
d:被評価会社の1株当たりの純資産額(簿価) D:類似業種に属する会社の1株当たりの純資産額(簿価)
斟酌率:大会社の場合 0.7、中会社の場合 0.6、小会社の場合 0.5

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非上場会社(小泉製麻株式会社)において、株主総会を招集してその特別決議を経ることなく、また著しく不公正な価額で新株発行を行ったなどとして取締役らの解任を求めた事件(神戸地判昭和51年6月18日・判時843号107頁)

5 取引事例方式

   客観的な取引価値を適正に反映させたと考えられる売買実例をもとにした評価方法

6 併用方式

   評価方法による評価額を単純又は加重平均して算出する評価方法

☑ 裁判例
● 株式譲渡制限のある非上場会社において、株主の譲渡承認請求を会社が承認せず、会社が指定した買取人と株主の間の売買価格の協議が調わなかったため、裁判所に売買価格の決定が求められた事件(福岡高決平成21年5月15日・金融商事判例1320号20頁)