Case1.会社に対し、株式の買取りを請求し、額面での買い取りを実現できた事例

■紛争の内容
依頼者は、もともと創業者の一人で、筆頭株主でした。
当事務所に依頼してきた時期に経営から退くことになり、それと同時に株式も買い取ってもらうことで会社との関係を全て終了することを希望して、当事務所にご依頼頂きました。

■交渉の経緯
当事務所が代理人に就任した際、最初は、純資産額で計算した金額での買い取りを求めました。
非公開会社の株式には市場価格がありませんので,株価の算定方法が複数存在しますが、純資産額で算定することも、算定方法の一つです。
ですが、会社側にも代理人が就任し、交渉が進展しなかったことから、結局、こちら側から調停を申し立てました。

■本事例の結末
結局のところ、調停では、額面の金額で買取金額が決定しました。純資産額で計算した金額よりは低かったものの、株式買い取り請求をするための他の購入者もいない事案でしたので、購入を認めさせること自体、有利な結果といえるものでした。

■本事案に学ぶこと
 株式の市場価格の無い非公開会社の場合には、株式の算定でもめることもしばしばあり、また、買い取り自体を拒否される可能性すらあります。
 そうした中で、買い取りを認めさせることができた点で、本事例は成功と言えるものでした。

Case2.個人株主が,会社に対し額面の半額に減額した株価での株式買取をしてもらえた事案

■紛争の内容
依頼者は、平成20年ころ、知人を介して、ある閉鎖会社の株式を500万円分買うことになりました。
元々付き合いで購入した株式でしたので、依頼者としてもこの株式を持ち続ける意思もメリットもなく、この株式を処分して換価したいと考えました。
しかし、閉鎖会社であるため、自由に処分することができず、やむなく会社に対し買取を求めましたが、全く応じてもらえず、弁護士に買取交渉を依頼することにしたのです。

■交渉の経緯
会社側は、弁護士からの受任通知に対し、「弊社は赤字で、とても株式を買い取れる状況ではない」などと述べ、当初買取を拒否しました。
しかし、同社はネット上に営業を続けていることを前提とした情報を流しておりましたので、
赤字であるのであればその旨証拠が欲しいと求めたところ、同社は決算書の開示をしてきました。
同決算書上、確かに赤字に近く、低迷はしていたものの、全く財産がないという状況ではありませんでした。
通常の株価の算定方法では、ほぼ値がつかない状況ではありましたが、
こちらとしては少しでも額を上げてほしいということで、時間をかけて交渉することもやむなしとしました。

■本事例の結末
本件では訴訟をしても、法的に買取を請求できる条件を満たしていませんでした。
あくまでの任意の買取しか期待できなかったため、双方が譲り合う内容で買取金額が決定しました。
こちらは買取金を期間1年・3回の分割払いとし、額面の半額で買い取りを求め、相手方はこれに同意しました。
結果としては、額面500万円であったものが250万円になってしまったものの、
相手方は合意の内容を誠実に履行し、依頼者は買取金全額を回収できました。
本事案に学ぶこと
非公開会社は,株価の算定が難しいうえ、小規模であることもあって、買い取りを任意にしてもらうことにも困難を伴います。
しかし、可能な限り双方の譲歩できるラインを探り、基本的な株価算定法で計算できる額よりも株主にとって良い額で買い取ってもらえるケースもあると感じました。