質問
借主がアパートを退去した後、敷金返金を主張していましたが、その後、連絡が取れなくなってしまいました。原状回復費用は敷金の額を上回るのですが、今後、どのようにしたらよいでしょうか。

回答
本来であれば、原状回復にかかる費用(部屋の通常の使用を超えて汚損した部分に限る)に敷金を充当して、それでも足りない部分を請求したいところですが、連絡が取れなくなってしまったということからすると、現実的な回収見込みは限りなく低いと言わざるを得ません。
ただ、オーナーのご希望(敷金で足りない部分の請求は諦めてもよいが、後々、借主から敷金を請求されるなど不利な立場になることを避けたい)であれば、意思表示の公示送達という制度を利用すれば実現することが可能です。

意思表示の公示送達とは、大まかに言うと、以下のようなものです。
 ① 原状回復費用の見積書・室内の汚損状況を撮影した写真を用意する
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 ② 原状回復費用と預かっている敷金とを相殺する旨の相殺通知書を、現在判明している現住所に内容証明郵便で送る
  (この郵便はもちろん「あて所尋ねあたらず」で戻ってくる)
   ↓
 ③ 手を尽くして借主の居所を調査した旨の調査報告書を作成する
   ↓
 ④ ②の戻り郵便、③の調査報告書を添付して、裁判所に公示送達の申立をする
   ↓
 ⑤ 裁判所の許可決定後、問題がなければおよそ1か月程度で意思表示(=「敷金を原状回復費用と相殺しました」)の効果が発生する

このような法的手続きを踏んでおけば、万一、後から賃借人が出て来て、「あの時の敷金を返せ」等と主張してきたとしても、オーナーは「意思表示の公示送達によってすでに相殺済みなので、敷金の返還義務はない」と主張することができます。