紛争の内容
ご依頼者様は、会社を経営されていたところ、助成金の申請を社会保険労務士に依頼されていました。
しかしながら、依頼をしていた社会保険労務士の方で、申請にかかるミスがあったため、当該申請が通らず、それにより、会社に損害が生じてしまったとのことでした。なお、相手方である社会保険労務士からは、契約書上、損害賠償額の上限が定められていたため、上限の金額で、ご依頼者様に対して賠償をするとの提案がありましたが、損害の補填には到底及ばない金額でした。
この点、私共が検討したところ、申請ミスについて、相手方の重大な過失があったとすれば、損害賠償額の上限を定める条項が公序良俗に反して無効になる可能性もあるかと考えられました。もっとも、当該条項の有効性を裁判で争うよりも、相手方と賠償額について協議をした方が解決に資すると考えられましたので、今回、相手方に対して、損害賠償請求を求める民事調停を提起するご依頼をいただくこととなりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
まず、私共の方で、相手方の申請ミスが重大な過失に基づくことを指摘する申立書を作成し、簡易裁判所に対して民事調停の申立てを行いました。初回の期日においては、相手方も出席をしまして、ご依頼者様において被った損害金を補填するための解決金の額について、双方主張を行いました。
本事例の結末
私共の主張により、調停委員においても、申請ミスについて相手方に過失があったものと考えていただけましたので、調停委員から相手方に対して、ある程度の解決金を支払うことを説得していただけました。
これにより、相手方も申請についての過失があったことを認めましたので、こちらのご依頼者様が納得できる解決金の支払いを約束していただくことができました。結果的に、初回期日にて、無事、ご依頼者様が納得できる内容にて民事調停を成立させることができました。
本事例に学ぶこと
契約書において、こちらに不利な内容が定められていたとしても、事案によっては、条項の内容を争うことも可能な場合がございます。トラブルに巻き込まれた際は、契約書で定まっているからとすぐに諦めてしまうのではなく、一度、法律に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
弁護士 渡邉 千晃