私は、一代で会社を築いたものの、昨今の不況で業績は悪化し、負債もかなり膨らんだことから倒産することを決意しました。しかし、息子も同じ事業を継ぎたいと言ってくれていたため、何とか息子のために事業を残したいと考え、息子が代表となる別の新会社を設立し、その会社に私が経営する会社の事業設備を贈与したり、新会社が負担すべき債務を肩代わりして弁済するなどしました。
会社が破産手続開始後、管財人弁護士から、息子の会社に対して、否認権を行使すると通知がありました。何が問題だったのでしょうか。

倒産を決意した段階で、会社の事業設備を贈与したり、新会社が負担すべき債務を肩代わりして弁済している点が、倒産会社の債権者の引当財産を減少させる行為であり、詐害行為と判断される可能性があります。

いくら息子が事業を継ぐとはいえ、倒産会社の債権者としては、息子の会社に代わりに請求ができるわけではないですし、倒産会社の設備等は換価すれば債権者への配当の原資になる可能性もあるにもかかわらず、それが息子の会社に逸出すれば、債権者の利益は侵害されるからです。

当然、受益者である息子の会社も、事業を引継ぐという息子としては、親の会社の経営状況などは把握しているはずですので、詐害行為として否認権の行使がなされたものと言えます。
また、破産法160条3項により、無償行為として否認権を行使される可能性もあります。