紛争の内容
売掛金のある会社に対して、請求をしておりましたが、言い訳ばかりでなかなか支払ってもらえませんでした。
債務者の会社はキャッシュが足りていない側面がありましたが、不動産を有しておりました。
そのため、不動産の価値は高いとは言えませんでしたが、仮差押えを行い(登記がされます)、その上で本訴を請求し、本差押えに進める方針でご依頼を受けました。

交渉・調停・訴訟等の経過
仮差押は、権利義務関係が裁判所において確定する前に行われる財産処分を制限するものです。
そのため、被保全債権の存在や差押の必要性を裁判所に疎明する必要があります。
疎明するに当たっては書証のほか、人証(陳述書)、不動産登記や商業登記を準備し、提出します。
申立てを行うと裁判官からの問い合わせなどがあり、問題がなければ、仮差押えが進められます。
このような手続をしていることを債務者に知られてしまうと、先に売却されてしまう等のリスクがありますので、秘密裡に行われます。

本事例の結末
仮差押は無事に認められ、相手方会社の保有する不動産に対して仮差押することが決定されました。
すると、それを避けたいと思ったのか、債務者は債務全額を任意に返済しました。
それゆえ、本差押まで進むまでもなく、事件は解決となりました。

本事例に学ぶこと
会社間の紛争に限りませんが、不動産等については、費消しづらい資産であり、債権回収を考える上で重要です。
ただし、その価値はまさにピンキリであり、市場価値の高い不動産であるのが理想です。
通常、債権回収する場合には、本訴を提起し、勝訴した上で、差押という強制執行手続に進みます。
しかし、このような手続をしていたのでは時間がかかりますので、その間に債務者が不動産を売却してしまうなどの失効逃れに及ぶことがあります。それを避けるためにあるのが、「仮」差押という手続です。これにより、登記がされますので、不動産を売りづらくなります。つまり、仮差押のある不動産を買った人は、後に本差押が実行されると有無を言わさず手放さなければならなくなるリスクのある不動産として購入することになります。通常このような土地は誰も欲しくはありませんので、買手がつかない(買われたとしても後から本差押ができる)という意味で有効な手段です。欠点は、仮差押ですので、必ずその後に本訴を提起し勝訴したのちに本差押をしなければその不動産からは債権回収できないという点と、「供託金」といって不動産の価値の一部をお金として供託しなければならない点です(債務者に、容易に不動産を売却させなくするため、その担保という意味もあります)。10%程度のこともありますが、高くて30%程度のこともあります。
今回は、仮差押えによるプレッシャーにより任意に支払をしてきたことで事件が解決しており、そのようなケースもあります。

弁護士 時田 剛志