紛争の内容
私立学校で問題行動を繰り返していた生徒に対して、退学処分を決定したところ、不適切な決定であるとして退学処分が無効であることを求めた訴訟が提起されました。学校としては、学校業務を遂行するためにやむを得ず退学処分を行いましたが、当該生徒から訴訟提起をされてしまったため、当事務所にてご依頼をうけ、訴訟対応をすることとなりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
訴訟では、退学処分を決定した理由や学校の規則などを主張しました。
特に、学校としては再三にわたって指導などを行っていたことから、尽くせる手段を全て尽くしたが改善が見られなかったのでやむを得ず退学処分を選択したということを主張しました。
しかし、停学処分などを行わずに退学処分を選択したという経緯があったため、退学処分がいかにやむを得ない判断であったのかということを、学校関係者に細かく聞き取りを行い、主張を組み立てました。
関係する裁判例なども調査・引用して主張を行いました。
たとえば、東京地方裁判所令和4年4月18日判決などは、私立高校に在籍していた原告が、他に生徒に対する暴行を理由としてなされた退学処分に対して、校長の裁量権の範囲を逸脱し又は裁量権の行使を濫用するものではなく適法であると判断した事例であり、「学校において、退学処分を行うかどうかの判断については、学校内の事情に通暁し直接教育の衝に当たる校長の合理的な教育的裁量に委ねられるべきものである。したがって、裁判所がその退学処分の適否を審査するに当たっては、校長の裁量権の行使としての処分が、全くの基礎を欠くか又は社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用してされたと認められる場合に限り違法であると判断すべきものと解される」と判断して事例です。
このような裁判例を引用して、本件では、学校全体をあげて徹底した指導がなされていたのであり、それにもかかわらず原告には改善の見込みが見られなかったこと、そして、こうした行動の改善が見込まれない以上、周囲の生徒への被害がなくなることがない状況であったことからしても、上記裁判例の考え方を踏まえてもなお、こちらの判断は合理的であったことなどを主張しました。
他にも、東京地方裁判所平成29年12月19日判決や、大阪地方裁判所平成28年6月24日判決、東京地方裁判所平成20年2月27日判決なども引用して、学校側の裁量に濫用や逸脱がなく、本件の判断が不合理と言えないことを主張しました。

本事例の結末
結論として、相手方の請求金額の3分の1を下回る金額で、和解による解決をすることができました。
裁判所としては、こちらの主張をくみ取り、退学処分をすることについてやむを得なかったという心証を抱いている様子でした。しかし、事案の早期解決を図るために和解を行うことを学校とも協議して判断しました。
こうした結果、ご依頼から約3か月で事件が解決し、和解による早期解決を行うことができました。

本事例に学ぶこと
学校における紛争などは専門的な知識が必要となります。
今回は、専門的な知識に加えて、学校関係者からの細かい聞き取りなど膨大な準備が必要でした。
そうした専門知識や緻密な準備を行うことで、迅速かつ適切な解決を期待できます。
当事務所では、いじめ・学校法務専門のチームを設けており、本件も同チームの弁護士で担当しました。
学校法務で少しでも親並みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士 時田 剛志
弁護士 遠藤 吏恭