質問
相続が発生しましたが、相続放棄を考えています。
① 相続放棄のための時間はどの位かかりますか。
② 相続放棄をした場合、預金の扱いはどうなりますか。
③ 被相続人の老人ホームへの入居費用や入院費用をかなり負担しておりますが、その扱いはどうなるでしょうか。

回答
①について
相続放棄の申述申立にかかる時間は、通常、ご依頼いただいてから1か月程度です。
相続人の皆様のお手元に既に必要書類(被相続人の除籍謄本、住民票除票、出生から死亡までの全ての戸籍謄本・改正原戸籍、各相続人の戸籍謄本等)の一部が揃っている場合には、半月程度で申立ができることもあります。

なお、裁判所への申立後のスケジュールについては、
(1) 申立後1か月程度で裁判所から各相続人の皆様に事実確認を求める通知(回答書)が届く、
(2) 相続人全員が上記回答書に記入して裁判所に返送する、
(3) 返送後3週間前後で、裁判所から相続放棄の申述受理の審判が出される、
といった流れになります。

②について
相続放棄した場合、次順位の相続人が相続人となりますので、預金は、負債と合わせてそれらの方が相続することになります(それを望まないのであれば、それらの方もまた相続放棄をする必要があります)。
なお、預金を少しでも使ってしまうと相続を承認したものとみなされ、以後、相続放棄ができなくなりますので、注意が必要です。

③について
一般的に、これらの費用は、遺産分割を行う場合に寄与分(被相続人の財産の増加・維持に特別の寄与をしたもの)として評価され、その寄与の割合に応じて、費用を負担してきた相続人の相続分を増加させる可能性があるものです。
しかし、本件のように、プラスの財産が少なく、かえってマイナスの財産の方が多いというケースでは、いくら寄与分が観念できたとしても、そもそも分配の原資となるプラス財産がありませんから、相続放棄せずに遺産分割を行っても何ら報われるものはないということになります。

そうなると、結局、費用を負担してきた相続人は、相続手続の中では、誰に対してもそれらの費用相当額を請求することができないという結論になります。