質問
① 樹木を管理する上で、事前に行う自然災害対策はどんなものが例としてありますか。また、どこまでの範囲をやっておけば、予見をしたことになりますか。
② 不可抗力だということで、争えるのでしょうか。例えば、予想外の異状な強風、豪雨による事故などはどうなのでしょうか。
  

回答
①について
樹木の安全性に対する社会的な期待のレベルは、人の参集度、通行量などに応じて決まります。人が接近する可能性のある樹木のすべてについて、落木、落枝が生じないという安全管理が当然に期待されているわけではありません。
例えば、人が多数参集する場所であり、かつ、そのように形成された場所であり、そのことを設置者、管理者が十分に認識できたのなら、安全性への社会的な期待は高くなり、周到な安全点検等が求められることになります。

より具体的には、これまでの樹木に関する裁判例の判断においては下記の事情などが「瑕疵なし」の方向へ加味されております。
ⅰ 街路樹等維持標準仕様書を作成し、これに従って樹木の剪定等を行っていたこと
ⅱ パトロール等によって危険がある樹木(枯死した樹木や枯れ枝)の存在が判明した場合、随時剪定を行っていたこと
ⅲ 危険な樹木について注意喚起を促す表示(看板等)をしていたこと
ⅳ 管理者が設置者に対し、危険性の存在等を進言していたこと
ⅴ 危険木への立入禁止や防止柵の設置

②について
回避可能性がなければ免責されますので、不可抗力ということで、争うことは可能です。
工事中の道路に設置されていた赤色灯標柱等を他車が倒し、その直後に現場を通行した自動車が事故を起こしたという事案では、道路管理者が対策をとることが事実上不可能であったことが考慮されて瑕疵が否定されています。(時間的に対策を講じることができたか否かがポイントではあると思います。)

地震やゲリラ豪雨、予想外の異常な強風や、豪雨による事故も、予想外である上、そのような事態から事故までに時間的な余裕がなく、対応不可能であれば不可抗力として争うことは可能と思われます。

ただし、これらの事態が生じ、その後危険性がある程度予想できたのに、何らの対策もとらずそれを放置し続けたといった事情が新たに生じれば、瑕疵が認定されてしまう可能性はあると思います。