質問
当社の事務所に、未成年者が窃盗で侵入し、金庫(時価は1万円程度)、現金(10万円)を持ち去る事件が発生しました。未成年者は警察に逮捕されましたが、金庫は破損のために使えず、現金は返ってきましたが1000円足りません。
① どの位の損害賠償が可能でしょうか。事務に費やした時間も損害賠償できるでしょうか。また、加害者に損害賠償を求める場合の手順はどのようになりますか。解決のためにどの位の時間が必要でしょうか。
② 加害者が未成年である場合の留意点はありますか。

回答
①について
金庫の時価が1万円とすると、求めることができる損害賠償は1万円と1000円の合計1万1000円となるのが原則です。
事務に費やした職員の労務金額というのは、それが必ず必要な労務ということであれば認められることがないとは言えないのかもしれませんが、この件の処理のためにどのくらいの時間を費やしたのか、また、それが必ず必要な労務だったのか、それによる損害はいくらか、というようなことを証明しなければならないため、仮に裁判で請求するとなると、そこまで請求していないことがほとんどではないでしょうか。
また、個人であれば慰謝料の請求ということもあり得るかもしれませんが、法人ですので、慰謝料の請求は難しいと思います。

損害賠償を求める手順は、通常のやり方としては、損害の賠償を求める内容証明郵便を出す、支払がないときは、次に調停あるいは訴訟をするという順番になるのですが、今回の場合、金額も少ないので、調停を起こすということになるかもしれません。
この手続きに要する時間は、半年程度かもしれません。

以上が通常のやり方ですが、このような犯罪を起こした場合、被害者と示談をするかしないかでは、加害者に課される処罰の程度が違ってきます。もちろん、示談ができた方が罪が軽くなるので、加害者が被害者に対し、通常の損害額より大きなお金を払っても示談するということがよくあります。
今回の場合も、加害者についた弁護人(弁護士)から、示談をして欲しいという連絡があるのではないでしょうか。

その場合、(立証が大変な)労務金額とか、法的には請求が難しい慰謝料を請求するという意味も込めて、実際の損害額以外に(あるいは実際の損害額も含めて)、5万円~20万円位の範囲で示談金の請求をすることも考えられます。
被害者は示談をして示談書を作成し、それを刑事の裁判所に提出して罪を軽くしようとします。お金の支払いが後回しになると、刑事事件が終わった後は、示談書があっても結局払わないということもあるので、示談書にサインとするのと同時にお金を受け取ることが大事です。

②について
加害者が未成年者であるための配慮というのはとくにないのですが、お金の支払が、どうしても示談を交わしたのちになる(あるいは分割払いになる)ということでしたら、親に保証人になってもらうということが考えられます。また、形式的には、示談書の中に親が親権者として名前を出すことになります。

なお、親への請求が可能かと問題がありますが、加害者が小学校を卒業する12歳程度の年齢である場合は、民法714条によって親に請求することも考えられるのですが、加害者がそれ以上の年齢だと、親に請求するのは難しくなってきます。