質問
3年前に入居者が区分所有マンションの部屋の1室で首つり自殺した物件について、親族より買い取りの依頼が当社にございました。当社で買い取り、リフォームをして再販をする予定です。
① 販売するにあたって、告知義務は絶対かと存じますが、どのくらいの期間、告知しなくてはいけないでしょうか。

② 例えば、「一度賃貸に出して第三者を入居させる」「フローリング床、クロス等の張替をする」ことにより、告知義務の仕方・期間がゆるやかになる等の方法はあるのでしょうか。

③ 上記のような物件は市場価格の相場からどれくらいの割引で取引がされることが多いでしょうか。

④ 販売する際の広告、契約書特約事項に記載する内容はどのようにすればよろしいでしょうか。

回答
①について
心理的瑕疵やその告知期間については法律で明確な定めがあるわけではなく、ケースごとの個別具体的な事情から判断するしかありません。
その中で、裁判例が判断要素としているのは、買主の利用目的(居住用か事業用か)・居住形態(家族か単身か)・事件の重大性や残虐性・事件からの経過年数・事件建物の有無(事件のあった部屋や建物が今も残っているか)・地域住民の流動性(都市部か田舎か)等であると言われています。

居住用マンションの室内で自殺があった例では、自殺があったのが5ヶ月前~6年11ヶ月前で「心理的瑕疵あり」として、売買契約の解除が認められた事例がありますので、これらを参考にすると、告知義務の期間は7年程度ということになると考えられます。

②について
室内で自殺のあった居住用マンションの売買の場合、「フローリング床、クロス等の張替をする」方策を取ったとしても、それにより一般的な買主の心理的抵抗が薄くなるとはいえず、告知義務の程度や期間にあまり影響はないと考えられます。
また、「一度賃貸に出して第三者を入居させる(それから転売する)」という方法も、賃貸物件であれば有効な方策と思われますが、売買の場合には決め手とはなりません。

ただ、裁判例での判断要素は上記のとおりですので、事業用として売る、単身者に売るのであれば、告知義務の期間をある程度短くする方向に働く事情になるといえます(売買のケースで裁判例が心理的瑕疵を否定しているのは、主に土地等の売買で、自殺のあった建物自体がすでに取り壊されていたり、取り壊し予定であったりするものが多いです)。

③について
ケースバイケースで、相場というものが存在しないように思われます。裁判例を見ますと、市場価格から5%~50%減価している事案があり、大きな開きがあります。自殺からの経過年数、自殺のあった事実が近隣に広く知れ渡っているか等が考慮されているようです。

④について
募集広告には心理的瑕疵の具体的な内容まで記載する義務はありませんので、お書きになっているとおり「心理的瑕疵あり」とするか、単に「告知事項あり」とすれば足ります。
他方、契約書特約事項や重要事項説明書では、具体的に告知する義務がありますので、例えば、「平成25年9月に本物件和室内において家人が自殺(縊死)しています。買主はこの事実を了承し、本物件を買い受けるものとします」などと記載し、きちんと説明する必要があります。