質問
当社にはタイに子会社があり、当社の社員が出向しています。今回、タイ子会社において、タイ現地採用の社員が会社の備品を窃盗したとの疑惑があります。
当社の就業規則では、上長の管理監督責任を規定していることから、上長である当社からの出向者を懲戒処分することが可能でしょうか。
また、この上長は、すでに定年退職しており、本社へ復帰して、定年後の有期再雇用となっています。この場合、処分は可能でしょうか。

回答
1 上長である出向者の懲戒処分について
出向社員に適用になる就業規則は、出向元と出向先との間で協議して決定すべきものであり、出向元と出向先との契約(出向協定)の内容によって決まります。
また、その出向社員への就業規則の適用については、あらかじめ労働者に明示するべきですが、明示がない場合は、一般的には、就労に関するものは出向先の就業規則、そうでない権利義務に関するものは出向元の就業規則と考えられています。

例えば、労働時間・休日・休憩関係は、就労に関連するものなので出向先の就業規則が適用となることが多いです。
懲戒については、出向元、出向先それぞれがその懲戒規定に基づき懲戒権を有していると解されています(東京地裁平成4年12月25日判決)。ただ、出向先で非違行為を行った労働者に対し、出向先が処分をし、出向元がさらに処分を行った場合、二重処罰として違法と評価される可能性があるので注意が必要です。
なお、解雇、退職、出向元への復帰といった労働者の地位の得喪に関するものは、出向元の就業規則が適用になると解されています。

2 退職・再雇用者に対する就業規則の有効性
本来は、契約社員、パートタイマー、再雇用者など、非正規の社員がいるのであれば、それぞれ雇用形態に応じた就業規則を作成しておく必要があります。
もっとも、再雇用者向けの就業規則がないということであれば、社員向けの就業規則により上記処分をすることは可能と思われます。裁判例でも、社員就業規則はあるが、日雇い労働者に対する就業規則が定められていなかった事案において、社員就業規則を日雇いにも準用するのが当然であるとしています(日本ビクター事件 横浜地裁昭和41年5月25日決定)。
ただし、最近の有力説では、正社員用の就業規則が存する事業場で、パートや嘱託等の正社員とは異なる労働者集団に適用される就業規則・規則条項が作成されていなかった場合、本則たる正社員用の就業規則が適用されるのか、適用条項が欠けたままの状態であるのかは、個々の事例に則して就業規則の合理的解釈により判断すべきであるとしています。
いずれにせよ、就業規則の作成義務(労基法89条)違反や、労使間での解釈上のトラブルを生じさせないために、契約社員等に適用する就業規則を明確にしておくことは必要かもしれません。