法務デューディリジェンスを行う場合、会社組織の調査を行うことがあります。定款・社内規定、株主総会・取締役会の議事録、関連会社、過去の組織再編・M&Aなどが調査の対象になり、また調査結果のM&Aへの反映が問題になります。

1 はじめに

M&Aにおける法務デューディリジェンスでは、対象会社の会社組織について調査を行なうことがあります。会社組織に関する調査は、対象会社が会社法その他の法令に従って適切に運営されているかを確認するとともに、予定されているM&Aの実行に支障となる事項がないか、また、M&A後の会社運営に影響を及ぼす問題がないかを確認することを目的とします。

2 定款・社内規程

まず、対象会社の定款を確認します。定款は会社の基本的なルールを定めるものですので、商号、目的、機関設計、株式に関する規定などを確認するとともに、登記事項証明書や実際の会社運営との間に不整合がないかを確認します。

株式譲渡によるM&Aの場合にとくに重要なのは、株式の譲渡制限に関する規定です。非公開会社では、株式の譲渡について会社の承認を必要としていることが一般的です。この場合には、M&Aによる株式譲渡について、定款および会社法に従った承認手続を行う必要があります。そのため、誰が承認機関となっているかを確認し、クロージングまでに必要な手続を整理します。

また、取締役会規程、職務権限規程、稟議規程等の社内規程も確認します。これらについては、規程が存在するかという形式面だけでなく、重要な契約の締結、借入れ、設備投資、資産の取得・処分等について、誰がどの範囲まで決裁できることになっているかを確認します。

もっとも、中小企業のM&Aでは、社内規程が十分に整備されていなかったり、規程は存在していても実際の運用がこれと一致していなかったりすることも珍しくありません。そのため、規程上のルールだけを見るのではなく、実際の意思決定がどのように行われているかも併せて確認する必要があります。

3 株主総会・取締役会の議事録

株主総会議事録や取締役会議事録は、対象会社において重要な意思決定が適切に行われてきたかを確認するための重要な資料です。

議事録のうち、M&Aに影響する重要な事項を中心に確認します。例えば、取締役などの選任、役員報酬、配当、重要な資産の取得・処分、多額の借入れ、関連当事者との取引、増資や組織再編などについて、必要な機関決定が行われているかを確認します。

議事録を確認することには、もう一つ重要な意味があります。議事録には、会社が過去に行った重要な取引や経営上の問題が記載されていることがあるためです。そのため、議事録の確認を通じて、契約書等の他の資料だけでは把握できなかった重要な取引や紛争、関連当事者取引などが判明することがあります。このような事項が見つかった場合には、関係資料の追加開示を求め、必要に応じて調査範囲を広げます。

4 関係会社

対象会社に子会社や関連会社がある場合には、その概要について確認します。とくに対象会社と関係会社との間で継続的な取引がある場合には注意が必要です。

例えば、対象会社が関係会社から不動産を賃借している場合、関係会社に業務の一部を委託している場合、対象会社と関係会社との間に貸付けや債務保証がある場合などです。M&Aによって対象会社が売主側の企業グループから離脱すると、従来と同じ条件で取引を継続できるとは限りません。

とくにオーナー企業では、対象会社の事業とオーナーやその親族が所有する会社との関係が明確に分離されていない場合があります。事業上重要な不動産をオーナー個人や関係会社から借りていたり、対象会社の業務の一部を関係会社が担っていたりすることがあります。このような場合には、M&A後も対象会社が単独で事業を継続できるかという観点から、関係会社との取引内容を確認する必要があります。

また、対象会社が関係会社の債務を保証している場合や、反対に関係会社から保証を受けている場合には、M&Aに伴ってこれらを解消する必要が生じることがあります。そのため、関係会社との資金関係や保証関係についても確認しておくことが重要です。

5 過去の組織再編・M&A

対象会社が過去に合併、会社分割、事業譲渡等の組織再編を行っている場合には、その内容についても確認します。ただし、過去のすべての手続を詳細に再検証するのではなく、現在の対象会社の事業や資産・負債に影響するものを中心に調査することになります。

例えば、対象会社が過去の事業譲渡によって現在の主要事業を取得している場合には、その事業譲渡契約を確認し、対象となる事業、資産、負債などがどのように移転されたかを確認します。会社分割や合併の場合にも、現在の重要な資産や契約関係がどのような経緯で対象会社に承継されたのかを確認することがあります。また、売主に対する未払の買収代金、価格調整、アーンアウトなどが残っていないか、過去の売主との間で紛争が生じていないかなどは、現在の対象会社の債務に直接関係するため重要です。

反対に、対象会社が過去に事業や子会社を売却している場合には、売却時の契約に基づく補償義務などが現在も残っていないかを確認することがあります。

6 調査結果のM&Aへの反映

会社組織に関するデューディリジェンスで問題が発見された場合には、その問題の内容や重要性に応じてM&Aの条件に反映します。

比較的軽微な不備であれば、クロージングまでに議事録や社内手続を整備するなどの方法で対応できます。他方、重要な関係会社との取引や保証関係が残っている場合には、その解消をクロージングの前提条件とすることがあります。また、過去のM&Aなどに起因する潜在的な債務が存在する場合には、株式譲渡契約において表明保証や補償の対象とすることも考えられます。

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この記事を書いた弁護士:代表弁護士 森田 茂夫

M&A

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会会員。早稲田大学法学部卒業。
買手企業、売手企業からの依頼に応じて、M&A仲介業者との仲介契約書、買手企業と売手企業間の基本合意書、株式譲渡契約書などの契約書レビューを行うとともに、契約書、人事労務関係、株式などについてのデューデリジェンスを行っている。迅速かつ正確な対応には定評がある。