紛争の内容
事件の相手方は、自動車販売店である依頼者から、約200万円の自動車を購入しました。
代金は全額支払われ、登録名義の変更も完了し、あとは引き渡すだけという状態でした。
しかしながら、約束の期日になっても、相手方は車両の引き取りに来ませんでした。
販売店は、電話や手紙などで連絡を試みましたが、音信不通の状態になり、長期間が経過してしまいました。
もっとも、代金は支払済みで、登録名義も変更されているため、自動車を勝手に処分するわけにもいきません。
そこで、この問題を解決するため、販売店からご依頼を受けました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まずは、本件の売買契約を解除することにしました。
具体的には、登録名義を販売店に変更すること等を請求する訴訟を提起し、そのなかで、受領遅滞を理由とする売買契約の解除を主張しました。
訴訟においては、こちらの主張が認められ、勝訴判決を得ました。
判決において、売買契約の解除が認められたため、販売店は売買代金を相手方に返す必要があります。
しかしながら、売買代金を返却する旨の通知文を送っても、相手方からの反応はまったくありませんでした。
そこで、この売買代金については、訴訟において販売店に認められた損害金(車両の格落ち分や保管費用相当額)を相殺したうえで、法務局に供託することになりました。
事前に法務局とも協議したうえで供託を申請し、スムーズに供託を完了することができました。

本事例の結末
本件では売買契約の解除したうえで、自動車の登録名義変更、代金の返還(供託)も完了し、問題解決に至りました。

本事例に学ぶこと
本件は、買い手が受領をしないことを理由とする契約の解除という特殊な事例でした。
原則として、債権者の受領義務は認めないものとされていますが、売買契約においては、契約の類型的特徴として、買主に受領義務を認めることが一般的とされ、受領義務に対する違反があった場合、債務者は、債権者に対して、債務不履行の一般法理に従い、契約を解除することができるとされています。
本件でも、この考え方を引用し、こちらの請求が認められました。
また、供託手続きについても、事前に法務局を協議していたため、問題なく手続きが終わりました。

弁護士 田中 智美
弁護士 赤木 誠治