1 はじめに

中小企業が資金繰りの必要に迫られる場合、事業からの利益はそこそこ出ているが、一時間的に現金、預貯金が不足したことから、急な資金繰りに迫られるという場合と、慢性的な赤字が続き、資金が底をついて事業の継続が難しいというような場合があります。
また、前者の場合でも、本来は、急な資金が必要になっても、手元にある現金、預貯金で賄うことができればベストです。そういう意味では、常に新規事業を模索することが必要です。

2 新規事業の模索

中小企業基盤整備機構のホームページを見ると、事業分野が異なる複数の中小企業の連携、地域資源を生かした商品やサービスの開発、農林漁業者と商工業者の連携、中小企業基盤整備機構と民間パートナーの連携などの事例が載っています。

これらは、もちろん重要なのですが、社長一人で取り組んでいても、なかなかいいアイデアは出てきませんし、仮に、いいアイデアが出てきても、それは既存のやり方を大なり小なり変えることを意味するので、社員の理解が必要で、これも簡単ではありません。

新規事業、あるいはそこまで行かなくても何か新しいやり方がないかと模索するときは、社長一人ではなく、このようなことに関心を持ってくれる社員を数人集めて、マーケティング委員会(名前は何でよいですが)のようなものを作るとよいと思います。その際、次のようなことが必要です。

① 定期的に委員会を開く。
② 社長がリーダーシップをとって、新規事業、新しいやり方の提案を積極的に行う。
③ 委員の社員から出てきたアイデアも、できるだけ尊重し、大きな負担を伴うものでなければ積極的に採用する。
➃ 委員の社員は、社内での地位、入社年次などにはまったく関係なく、マーケティングに関心がありそうな社員を選ぶ。
⑤ 委員の社員には、働きに応じてボーナス時に金銭的に報いる。
⑥ 社外のマーケティングに関する研究会、同業者会などがあれば、社長はもちろん、委員の社員も、分担して積極的に参加する。

社長一人では孤独で大変です。社内の仲間を募るとよいと思います。

3 資金繰り

冒頭で述べた、事業からの利益はそこそこ出ているが、一時間的に現金、預貯金が不足したことから、急な資金繰りに迫られるという場合です。例えば、取引先から売掛金の支払いを待って欲しいと言われた、取引先が倒産した、新規取引先から入るはずだった契約金が入ってこなくなったなどの場合です。

このような場合、次のような方策があります。
⑴ 取引銀行に、返済条件の一次的な変更が可能か、あるいは新規の融資が可能かを交渉する。
なお、日本政策金融公庫などでは、社会経済環境の変化により、一次的に売上の減少があり、経営状況が悪化しているが、長期的に見た場合、業績が回復し、発展することが見込まれる企業への融資も行っているようです。

⑵ 手形、売掛金があれば、手形割引、売掛金のファンドなどへの譲渡の可能性を検討する。

⑶ 不要な不動産、機械、車両などがあれば売却する。

⑷ 税金、社会保険料、地代・家賃のような、売上・仕入に直接影響を及ぼさないところと支払い猶予の交渉をする。
税金、社会保険料については、一次的な資金不足であることを説明し、理解してもらえば、すぐに差押のようなことはせず、分割払いなどに応じてくれると考えられます。また、地代・家賃については、賃料不払いを理由として明渡しの訴訟をするのは大変ですし、仮に勝訴しても、明渡しの強制執行に大きなお金が必要なので、貸主が訴訟を行うのはよほどの場合です。説明して、支払いを待ってもらいましょう。

⑸ 大口で、信頼関係がある取引先(仕入先など)があれば、一次的な資金不足である旨を話して支払いを待ってもらう。

これらの手段を尽くしても、支払いをすることができないというときは、民事再生手続きを使って企業を再建することも考えられます。民事再生手続とは、債権額を圧縮し、かつ分割で支払っていく再生計画案を作り、それについて、債権者の多数の同意を得、その上で、裁判所の認可を得て事業者の事業の再生を図る手続です。
民事再生手続きを行うためには、数百万円単位の裁判所に対する予納金が必要になりますし、その他に弁護士費用も必要です。
この手続きを取るためには、弁護士などの専門家に相談することが必要です。

4 法的な整理手続

慢性的な赤字が続き、資金が底をついている会社の場合、一次的な資金繰りをしても意味はありません。借りられなくなるまで、どこからでもいいから借入を続けるというような気持でいると、最後には、債権者が、サラ金、街金、闇金ばかりになり、取引先の信頼も失い、会社の資金は一円もなくなり、社長は夜逃げをして、従業員だけが会社に残されるというようなことになりかねません。

このような会社は、完全に行き詰る前に、法人破産手続きを取り、裁判所、破産管財人の監督の下で、財産処分、債権者に対する配当を公正に行うべきです。公正に手続きを進めれば、社長個人に対する取引先の信頼が失われることもないでしょうし、従業員から恨みを買うこともありません。

破産をする場合、民事再生手続よりは低額ですが、裁判所に対する予納金が必要ですし、また、弁護士費用もかかります。お金がないと、破産手続きもできないということになってしまいますから、このような状態の場合は、社長として早い決断が必須になります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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