通信販売を行なっている場合、契約書面にクーリング・オフの規定を記載しなければならないのでしょうか。そもそも通信販売にクーリング・オフはあるのでしょうか。
通信販売に関する規定は、改正がありましたので、改正された部分も含めて考えてみましょう。

通信販売にはクーリングオフ制度はない?契約が取消されることはない?

1 クーリング・オフとは

クーリング・オフ制度とは、一般的には、一定の期間内であれば、消費者が販売業者等との間で申込みまたは締結した契約を無理由かつ無条件で撤回または解除ができる権利のことをいいます。

特定商取引法には、クーリング・オフの制度が設けられています。

クーリング・オフの制度が設けられた趣旨は、一定の期間という、消費者に契約を締結することに対する熟慮期間を設けさせるとともに、事業者の不適切な勧誘を抑制したり、消費者の被害を救済するという趣旨があります。

特定商取引法でクーリング・オフの制度が認められているものは、訪問販売、電話勧誘販売、訪問購入、特定継続的役務提供、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引などです。

クーリング・オフにおける期間は、契約の類型によって異なり、8日のものもあれば20日のものもあります。

特定商取引法の上記類型に当たりうる契約を締結する場合には、クーリング・オフの適用がありますし、法定された書面がきちんと交付されていないと、クーリング・オフの期間の起算がされません。

そのため、例えば、契約締結後8日以内にクーリング・オフの主張がないから、安心としていたとしても、法定された書面が交付されていないことから、8日過ぎてもクーリング・オフがされるということもあります。(詳細は、この記事では省略します。)

2 通信販売にクーリング・オフの適用があるか

通信販売とは、事業者と消費者の隔地者間の取引であって、電話勧誘販売(電話で勧誘をしその電話で契約を締結するような類型です)以外のものをいいます。

イメージとしては、カタログをみて欲しいものを郵便で記載して注文をしたり、メールで注文をするものなどが該当しえます。

特定商取引法には、通信販売に関する規定がありますから、通信販売を行う場合には、特定商取引法の規定も注意をする必要があります。

例えば、通信販売を行う場合に関して、広告に記載しなければならない事項、広告に記載をしてはいけない事項等が定められていますので、きちんと広告に記載すべき事項が記載されているかなど確認する必要があります。

もっとも、通信販売は、訪問販売や電話勧誘販売の場合と比較すると、契約の締結をするか否かを判断する場合に、事業者等からの不当な圧力や影響を受けることは比較的低いとされてきました。
そのため、通信販売の場合には、クーリング・オフの制度が規定されていません。

3 返品特約について

もっとも、クーリング・オフの制度は規定されていませんが、返品に関する特約を定めていない場合には、商品の引渡しまたは特定権利の移転を受けた日から起算した8日以内であれば契約の解除(返品)が可能とされています。

もっとも、返品に関する特約を定めていれば、この法律上の規定の適用はなく、約定で定めたとおりとなります。

ただし、きちんと広告に記載することや、特定申込み(一定のフォーマットで申込みを受ける場合など)には、その申込みの最終確認画面で解除に関する事項を記載しておかなければいけません。

4 申込みフォームを利用した通信販売について(令和3年の改正について)

ところで、令和3年の特定商取引法の改正によって、「特定申込み」の場合に関し表示すべき事項、表示してはならない事項に関する義務を定めました。

そして、この義務に違反した場合には、当該契約は取消せるという効果が発生します。

「特定申込み」とは何かというところですが、これについては、簡単にいえば、事業者が用意をした一定の申込みフォームを利用して申込みを求める場合が該当しえます。
インターネットの通販だけではなく、申込みの形式を事業者が指定したはがきを利用して申込みをするような場合もこれに該当しえます。

このような場合には、商品の分量、販売価格・対価、支払い時期・支払い方法、引渡時期・移転時期・提供時期、申込みの期間がある場合には、その旨・その内容、申込みの撤回・解除に関する事項などを記載しなければなりません(特商法12条の6第1項)。

また、「次へ」と記載したボタンを押すと契約の締結となるような、申込みではないと誤認させるような表示や、先の表示義務について誤認させるような表示の記載をしてはいけません(特商法12条の6第2項)。

特に定期購入の場合には、1回に送付する分量だけでなく総量を示さなければなりませんし、1回の金額だけでなく総合計金額を記載などもしなければなりません。

これらの義務を事業者が怠り、消費者が表示を誤認して申込みをしたような場合には、当該契約は取消せるという効果が生じることになります(特商法15条の4)。

5 まとめ

ここでは、簡単な説明にとどまりましたが、通信販売については、特定商取引法上にはクーリング・オフの制度はありません。
しかし、返品特約の定めがない場合には、返品を受け付けなければならいませんし、令和3年の法改正により、消費者に誤認させるような記載をしたような場合には、消費者から契約の取消しを主張されることがあります。

通信販売であっても、契約の締結をするにあたっては、消費者に理解してもらうことが必要になります。
きちんとした説明、きちんと表示をして消費者に誤認されるような表示になっていないかなど、再度確認をしてみるなど、この機会に見直してみることをおすすめいたします。

ご相談 ご質問
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を監修した弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
弁護士のプロフィールはこちら