M&A(企業買収)を行う場合、デューディリジェンスと言って、買手は売手企業の内容を様々な観点から調査します。今回は、販売契約・サービス提供契約、仕入契約、委託契約(外注先との契約)の3つの契約について考えてみました。

1 はじめに

 M&A(企業買収)を行う場合、デューディリジェンスと言って、買手は売手企業の内容を様々な観点から調査します。今回は「契約」の分野について、どのような点に重点を置いてデューディリジェンスを行なったらよいのか考えてみたいと思います。販売契約・サービス提供契約、仕入れ契約、委託契約(外注先との契約)を対象とします。

2 顧客(販売先・サービス提供先)との契約について

⑴ Change of Control(チェンジ・オブ・コントロール)条項

売手企業の株主構成の変更など実質的な経営権がほかに移った場合、顧客は売手企業との契約を解除できる、あるいは売手企業は顧客の承諾を得なければならないとする条項です。このような条項がある場合は、買手としては買収公表前に、売手企業が買手のグループ会社となり実質的な経営権が移転することにつき、顧客の承諾を得なければなりません。

⑵ 中途解約条項

このような条項があると、顧客は、いつでもあるいは1〜3ヶ月の予告により、理由なく売手企業との契約を解除することができます。このような条項がないかどうかをチェックし、ある場合は、買収直後に顧客を失うリスクがありますので、そのようなリスクがあるかどうかを売手企業に確認する、中途解約された場合の責任をについて株式譲渡契約書に明記するなどの対処をする必要があります。

⑶ 契約期間と更新規定条項

自動更新なのか、その都度合意による更新をしていく必要があるのか、期間満了が迫っているのか、期間満了が迫っている契約は重要な契約か、更新をする見通しはあるかなどを確認しておく必要があります。

⑷ 独占的権利の付与条項

売手企業が顧客に対し、その顧客にしか売却しないという条項が入っていると、買手が他に売却しようとするときに障害になります。

⑸ 最恵国待遇条項

売手企業が他に安く売る場合は、顧客にも同額まで値下げするという条項です。このような条項が入っていると、買手の将来の価格戦略が制限されます。

⑹ 責任範囲の制限条項

トラブルが起きた際、売手企業が負う損害賠償額について制限する条項があるかどうかを調査します。制限する条項がない場合、売手企業が大きな責任を負う可能性があります。

⑺ 保証条項

売手企業が提供する製品やサービスの品質について、過剰な保証(期限が長い保証、広範囲の保証)をしていないかを調査します。

⑻ 知的財産の帰属条項

ITサービスや技術提供型ビジネスにおいて重要な条項です。カスタマイズしたプログラムや独自ノウハウの著作権・特許権が、顧客に帰属する形になっていないか、その他にも、知的財産権の帰属について、問題となる条項がないかどうかを調査します。

⑼ 競業避止条項

売手企業が、顧客との間で、「特定の地域内や特定の顧客には商品を販売しない」というような事業活動を制限する合意をしていないかを調査します。 このような制限があると、買収後に買手が自社のネットワークを活用して売手企業のビジネスを拡大しようとしても、契約上の制約がネックとなり、想定していたシナジー効果が得られない可能性があります。

3 仕入先との契約について

⑴ Change of Control条項

顧客との契約同様、仕入先との契約においてChange of ControlCOC条項は重要です。この条項は、経営権が移転することで、仕入先が売手企業との契約を解除し、供給を停止できる権利を持っていることを意味しますが、その仕入先からしか買えない「代替不能な原材料」がある場合、この条項によって供給をストップされると、売手企業が事業停止に陥ってしまうリスクがあります。

⑵ 価格改定条項

 原材料価格や為替の変動を理由に、相手方が一方的に価格を引き上げられる条項がないかを調査します。

⑶ 最低購入数量条項

「毎月最低〇個買わなければならない」という条項があるかを調査します。このような条項があると、買収後に買手が生産計画を変更したい場合に、コストの足かせになる可能性があります。

⑷ 品質保証規定条項

仕入れた原材料や部品に欠陥があった際の責任の所在の条項です。次のような点を調査します。

  • 検収規定: 商品到着後、何日以内に通知しないと欠陥を主張できなくなるという条項ですが、期間が短すぎないか。
  • 追及可能な責任範囲: 欠陥によって売手企業の製品に損害が出た場合、仕入先がどこまで賠償責任を負うか。
  • リコール費用: リコール発生時、それが仕入先に原因がある場合、回収・廃棄・代替品などの費用を仕入先に請求できるか。

⑸ 下請法への抵触

売手企業が、仕入先に対して不当な買いたたきや支払い遅延などの下請法違反をしていないか、買収後に、売手企業が下請法違反で勧告を受けるリスクなどがないかを調査します。

4 委託先(外注先)との契約について

⑴ Change of Control条項

販売先や仕入先と同様、経営権が変更になることで、委託先から契約を解除されるリスクはないかを調査します。例えば、委託先が買手の競合企業である場合、M&A成立と同時に委託契約を打ち切られる可能性があります。

⑵ 再委託の制限条項

   委託先がさらに他社へ再委託することを許可しているかを調査します。委託先が無条件で再委託できる契約になっている場合、再委託先の管理が難しくなり、買収後にサプライチェーン全体のガバナンスが効かないリスクがあります。

⑶ 知的財産権の帰属と利用権限条項

システム開発やデザインなどの場合、紛争が起きやすいポイントになります。

対価を支払った時点で、成果物について著作権を含む一切の権利が委託者(売手企業)に移転するとなっているかを調査します。「委託先に留保される」となっている場合、買収後にその成果物を自由に改変したり、他社に転用したりすることができなくなります。

また、委託先が元々持っていた技術や汎用プログラムが使われている場合、それらの「利用許諾(ライセンス)」が将来にわたって保証されているかについても調査する必要があります。

著作者人格権は委託先から売手企業に移転させることはできないので、著作者人格権を行使しない旨が明記されていることが必要です。

⑷ 機密保持条項

委託先に売手企業の顧客データや機密情報を預けている場合のリスクです。

委託先が個人情報の安全管理措置を適切に講じているか、漏洩時の報告義務や損害賠償義務が明確、委託契約が終了した際、預けたデータを確実に返却または廃棄させる条項があるか、委託先のセキュリティ体制をチェックしたり、報告を求めたりする権利があるかなどについて調査する必要があります。

⑸ 損害賠償の制限条項

委託先のミスで売手企業が損害を被った際の補償内容を確認します。

「賠償額は委託料の1ヶ月分を上限とする」といった制限がかかっていないか、(通常の過失ではなく)重大な過失があった場合のみ責任を負うことになっていないかなどを調査します。重大なシステム障害や情報漏洩が起きた際、実損害をカバーできないリスクがあります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
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