
M&A(企業買収)をおこなう場合、デューデリジェンスといって、買手は売手企業の内容を様々な観点から調査します。今回は、売手企業の「資産」について、どのような点に重点をおいてデューデリジェンスを行うのかを考えてみました。
1.資産デューデリジェンスの重要性

資産に関するデューデリジェンスでは、貸借対照表に計上されている資産が実在し、適正に評価され、法的にも問題なく利用・処分できる状態にあるかを確認することが基本的な目的になります。これは、買収価格を決めるためにも必要ですし、また買収後に想定外の損失や負担が発生しないかを確認するためにも必要な作業となります。
2.売掛金・債権に関する確認

まず注意すべき点は、資産の実在性です。帳簿上に計上されている資産が、実際に存在しているかを確認する必要があります。例えば、売掛金については、本当に取引先に対する債権が存在しているのか、回収可能性に問題はないのかを確認します。長期間回収されていない売掛金や、関連会社との不自然な取引による債権が含まれている場合には注意が必要です。
特に中小企業では、実態のない売上や、循環取引によって売掛金が膨らんでいるケースも存在するため、請求書、契約書、入金履歴などを照合しながら慎重に確認する必要があります。また、M&A直前に売上が急増している場合には、利益を良く見せるための一時的な売上計上が行われていないかについても確認が必要です。
3.在庫の確認

在庫についても、実地棚卸による確認が重要です。在庫数量が帳簿と一致しているかだけでなく、長期間動いていない滞留在庫や、不良在庫が適切に評価減されているかを確認しなければなりません。
製造業や小売業では、在庫が利益調整の手段として利用されることもあるため、過大評価にはとく注意が必要です。また、季節商品や型落ち商品については、実際には販売価値が著しく低下している場合もあります。帳簿上の金額だけではなく、市場価値や換金可能性も考慮して検討する必要があります。
さらに、委託在庫や預り在庫が混在しているケースでは、所有権の帰属についても確認する必要があります。
4.設備・不動産に関する確認

設備については、すでに使用されていないもの、老朽化によって将来的に多額の修繕費が発生するものが含まれている場合があります。また、除却済みであるにもかかわらず帳簿に残っているケースもあります。そのため、現地視察を行い、設備の使用状況や維持管理状況を確認することが重要です。
不動産については、登記簿による所有権確認だけでなく、担保設定、差押え、境界問題、用途制限などの法的リスクも調査する必要があります。
とくに工場用地や倉庫などでは、土壌汚染やアスベストの問題が後から発覚し、多額の除去費用が発生するケースがあります。このような環境リスクは、買収後に重大な損失につながる可能性があるため、必要に応じて専門家による環境調査を実施することが必要です。
5.知的財産に関する確認

知的財産権のデューデリジェンスでは、対象となる権利の法的有効性と帰属関係の確認が重要です。
まず、特許や商標などの登録状況、有効期限などを調査し、権利が現在も有効かを検証します。とくに、不実施による取消リスクや、第三者からの無効審判の有無は入念に確認すべきです。また、職務発明を巡る対価の支払状況や、共同開発契約における権利の帰属状況を確認し、将来的な紛争リスクを排除します。
さらに、他者の権利を侵害していないことの確認、ライセンス契約におけるチェンジ・オブ・コントロール条項の有無の確認も重要です。
これらを通じて、M&A後の事業継続性に支障がないかを総合的に評価します。
6.金融資産・投資資産の確認

金融資産や投資資産については、評価の妥当性が重要になります。関連会社株式や出資持分については、帳簿上は高額に計上されていても、実際には価値が大きく毀損している場合があります。
また、関係会社への貸付金についても、実質的に回収不能となっているケースが見受けられます。とくにオーナー企業では、グループ会社間で資金移動が複雑化していることが多く、実態を把握するためには資金の流れを詳細に確認する必要があります。
さらに、有価証券については時価評価や含み損益の確認も必要になります。
7.税務上の確認事項

資産の税務デューデリジェンスでは、帳簿上の資産処理が税法に準拠しており、将来の追徴課税リスクがないかを検証します。
まず売掛金などの債権では、回収不能として処理した「貸倒損失」が、税法上の厳しい要件を満たしているか確認します。要件を外れると損金不算入となり課税対象になります。
また棚卸資産(在庫)では、陳腐化を理由とした評価損の計上が適切かを精査します。単なる売れ残り予測での減額は税務上認められません。
さらに固定資産では、耐用年数や償却方法が適正かを調査します。
8.中小企業M&Aでとくに注意すべき点

中小企業のM&Aでは、オーナー個人と会社の資産が混在しているケースも多く見られます。例えば、会社名義で購入した資産をオーナー個人が私的利用している場合や、逆にオーナー個人名義の不動産を会社が使用している場合があります。
また、固定資産台帳が未整備であったり、在庫管理が不十分であったりするケースも少なくありません。さらに、親族会社との取引や、実態不明の仮払金・貸付金が存在することもあります。
このような場合には、帳簿確認だけでは不十分であり、現地確認や関係者ヒアリングを含めた実態把握が重要となります。
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