先日、テレビで、社員が億単位の金を横領したということが話題になっていました。このような横領事件は、それなりに大きな会社でも起こるものです。このような横領行為が発覚した後、会社としては、どのような対応を取ればよいのでしょうか。

1 証拠の収集
いきなり、横領をしたと思われる社員を詰問しても、自分はやっていないというに決まっていますから、まず、証拠を集めてください。会社の経理・税務をやってもらっている税理士の方の協力を得ながら、契約書、発注書、請書、請求書、領収書などの調査、会社の預金通帳との比較、問題ある社員のメールの調査、取引先となっている会社への聞き取りなどを行います
聞取りを行った場合、どのような聞取りを行い、どのような回答があったのかを、詳しく文書で残してください。

2 問題社員からの聞き取り
そして、ある程度事実を固めてから、問題社員から聞き取りを行います。社員から聞き取りをする場合、1人ではなく3人程度いた方がよいと思います。そして、1人は、問題社員とのやり取りを、できるだけ詳しくメモにします。
問題社員が横領行為を認めた場合、その場で、横領をした金額(詳しい金額が分からなければ概算でよい)、いつからいつまで横領行為をしたのか、横領の手口、横領した金額の弁済方法などについて、手書きでもよいですから文書を作り、横領をした社員の署名捺印をもらってください(捺印は三文判でもよいですし、署名だけでも構いません)。

3 横領行為があった場合に問題になるのは次の3つです。
① 業務上横領罪による刑事告訴
② 就業規則に基づいた懲戒
③ 民事の損害賠償
まず、①の刑事告訴ですが、刑事告訴をするにしても、ある程度の証拠がなければ警察は告訴を受け付けてくれません。1で述べたように、証拠の収集をできる限り行う必要があります。
その後、告訴状を作成して警察に出向き、告訴をすることになります。
次に、②ですが、就業規則にもとづいて懲戒処分を行います。金額にもよりますが、多くの場合は懲戒解雇になると思います。
③は、裁判所に損害賠償請求訴訟を起こすことです。

4 具体的な進め方
横領行為が発覚したときは、問題社員を自宅待機にし、前述のとおり証拠の収集を行います。
その上で、刑事告訴をするのか、どのような懲戒処分にするのかを決めなければなりませんが、刑事告訴はせずに、横領した金額を会社と問題社員とで決めた上で、頭金としてある程度の金額を支払わせ、残りは分割払いとして被害弁償をさせる、問題社員は懲戒解雇にするというようなやり方もあると思います。
問題社員に真摯な反省がない、横領した金額を返す気がない(あるいは返せない)という場合は、刑事告訴をする、懲戒解雇をする、場合によって、(結局回収することはできないかもしれないが)損害賠償の民事訴訟をするということもあり得ると思います。