企業がビルを借りる場合、賃貸借契約書に、「原状回復工事は、オーナー(貸主)が指定する業者が行い、費用は借主が負担する」という条項を設けることがあります。そして、賃貸借契約終了時に、オーナーが指定した業務が原状回復工事の見積書を出してくるのですが、その見積額が不当に高い場合はどうしたらよいでしょうか。

オーナーが指定した業者ではなく、もっと安く原状回復工事をすることができる業者をこちらで用意したいところですが、賃貸借契約書には、「原状回復工事は、オーナーが指定した業者が行う」となっているので、こちらの用意した業者が工事を行うことはできません。またオーナーは、信用できる業者が原状回復工事を行うことで、ビルのグレードを保ちたいと思っており、このようなオーナーの希望ももっともなことなので、この条項を無効ということもできません。

ただ、オーナーが原状回復工事の費用を負担するわけではないので、オーナーは業者が出した見積書にクレームをつけることはなく、その結果、この見積書が、必要のない工事や共用部分の工事を含んでいる、工事の作業者が必要以上に多い、単価が一般なレベルを超えて高いなどのことが往々にしてあります。

そこで、このような無駄がないかどうか、業者が出した見積書をよく検討する必要があります。必要のない工事、共用部分の工事の費用を借主に負担させることはできませんし、工事の作業者が必要以上に多い、単価が一般なレベルを超えて高いという場合も、通常考えられる範囲の作業者の数、単価を超えているという場合は、その超えている部分を借主に負担させることはできません。

また、汚損、損傷の修復費用については、借主の故意過失によって発生したもの以外は、特約がなければ借主に負担させることができず、また、この特約が有効になるためには、「通常の使用による汚損、損耗」についても借主が負担することが契約書に表示されている必要があります。
そこで、修復の対象となっている汚損、損耗が、借主の故意過失によって発生したものか、特約があるか、あるとしてその特約は有効か、などを検討する必要があります。

そして、上記のような問題がある場合、見積書の中のどの部分までを借主が負担するのかについて、オーナーと話し合いを行う必要があります。
オーナーが話し合いに応じない場合は、借主が妥当と思う金額のみ支払いをし、オーナーが何らかの法的アクションを起こしてくるのを待つ、あるいは、妥当と思う金額を支払った後、こちらから民事調停を起こし、調停の中で話し合いをするということが考えられます。