ショッピングセンターが休館になる場合、その中にある店舗も休業せざるを得ませんが、その場合、店舗は、賃料減額請求や損害賠償請求をすることができるのでしょうか。今回は、この点について考えてみたいと思います。

1 ショッピングセンターが休館になる場合

  ショッピングセンターが休館になり、ショッピングセンター内での店舗の営業ができなくなる場合があります。例えば、店舗としては、お正月の1日〜3日を営業したかったのに、ショッピングセンターが休館のために営業できないというような場合です。

このような場合、営業できなかった1日〜3日について、ショッピングセンターを運営しているビルのオーナーに対して、賃料の減額を請求するなり、あるいは本来上げることができたはずの利益(逸失利益)を損害証請求することができるでしょうか。

2 契約書のチェック

  このような場合、まずはショッピングセンターを運営しているビルのオーナーとの賃貸借契約書を見てみましょう。

契約書には、今回のような場合に、ビルのオーナーが賃借人に対して通知をすることによりショッピングセンターを休館にすることができるという記載がある場合、テナントの承諾を得て休館にすることができるという記載がある場合、あるいは何の記載もない場合など様々です。

契約書に記載がある場合は、そこにあるとおりにすればよいのですが、何の記載もない場合はどう考えればよいのでしょうか。

3 家賃の減額請求

賃貸人は、賃貸借物件を賃借人が使用収益するのに適した状態にしておく義務があります(民法601条)。

ところで、ショッピングセンターを休館にすることによって、賃貸人であるビルのオーナーは、賃借人が店舗を使うことができないようにしたのですから、(契約書に何の記載もない場合は)店舗を使えなかった3日分について、賃借人は日割り計算により賃料の減額を請求できると考えられます。

4 損害賠償請求

  それでは、1月1日〜3日にあげることができたはずの営業利益は請求できるでしょうか。

法律上、ビルのオーナーに損害賠償を請求するためには、ビルのオーナーに過失があり、それによって賃借人に損害を与えたことが必要です。それでは、今回の場合、ビルのオーナーに過失があるといえるでしょうか。

過失があると言えるためには、店舗の賃借人が損害を被ることを(ビルのオーナーが)予見できることと(結果予見可能性)、賃借人が損害を被ることを(ビルのオーナーが)回避できること(結果回避可能性)が必要とされています。

しかし、ショッピングセンターのうち、一つの店舗だけを開けておくことは事実上できないと思われますし、最近は、1月1日〜3日と休むところが多いことからしても、結果回避可能性がないとして、損害賠償までは認められない可能性が大きいように思います。

5 すでに数年間、店舗を閉めていた場合

  ビルのオーナーから1月1日〜3日はショッピングセンターを休館するという連絡が来て、それを拒否したり、賃料の減額を請求した場合は上記のとおりですが、例えば、3年前にそういう連絡が来たが、法律に詳しくなかったために、オーナーの要求に沿って店舗を休業した。しかし、本来は賃料を減額できるということが分かったので、今になって、減額になるはずだった賃料の返還請求をするということはできるでしょうか。

このような場合、仮に裁判になれば裁判所から、1月1日〜3日を休業したことによって賃借人は、ビルのオーナーのショッピングセンター休館という申し出を暗黙のうちに承諾していたといわれる可能性があります。とくに最近は、1月1日〜3日を休む店舗が多いことを考えると、このような暗黙の承諾を、裁判所は比較的簡単に認めるかもしれません。

暗黙の承諾が認められると、あとは錯誤があったために承諾してしまったのだから、この承諾は取り消すという様な主張になりますが、法律を知らなかったということを、錯誤を主張する理由にするのは難しいと考えられますから、賃料の返還請求は難しいのではないかと思います。

6 契約書の重要性

  上記は、契約書に、1月1日〜3日の休館についての記載がない場合です。記載があれば、その内容によって判断されます。

このように契約書の内容がどうなっているかは非常に大事ですので、何か問題が起きたときは、契約書を見直すことが重要です。また、そもそも契約書を締結する段階で、その内容をよくチェックし、訂正してほしいところがあれば、申し入れをして交渉をすることが重要だということになります。


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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
代表・弁護士 森田 茂夫
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