
ある日突然、他社から、商標権を侵害しているとして、商標の使用の差止請求や高額な損害賠償請求をされてしまうことがあるかもしれません。そのような請求に対して、適切に反論できなければ、当該商標を使用できなくなったり、高額な賠償金を支払わなければならなくなってしまうおそれがあります。
本コラムでは、商標権を侵害しているとの主張に対しどのような反論ができるのかについて解説します。
商標権侵害とは
そもそも商標権の侵害は、正当な権限なく、登録商標と同一の類似の商標を、同一又は類似の商品・役務について、使用した場合に生じます。
商標権侵害との主張に対する反論

他社による商標権を侵害しているとの主張に対して、以下のような反論をすることが考えられます。
類似性がないこと
商標権の侵害とは、正当な権限なく、登録商標と同一の類似の商標を、同一又は類似の商品・役務について、使用することです。
つまり、他社の登録商標と、貴社の使用する商標が類似しているとは言えない場合には、商標権の侵害は認められないということになるため、その旨反論することが有効となります。
もっとも、商標が類似しているか否かの判断は非常に専門性が高く困難です。類似性の判断についてお困りの際には商標を専門とする弁護士に一度相談することをおすすめします!
商標的使用をしていない

商標の本質は、判例において、自己の商品(役務)を他人の商品(役務)と区別するための標識としての機能にあるため、形式的には他社の商標権の使用に当たる行為だとしても、自他商品の識別機能を果たさないような態様のものであれば当該行為は商標権の使用には当たらないと考えられています。
そして平成26年商標法の改正にて、そのような考え方が商標法26条1項6号として明文化されました。(※)
※(参考条文)商標法26条1項6号
商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
6号 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標
つまり、形式的には他社の商標を使用していても、商標的使用でない場合には、商標的使用でないため商標権侵害に当たらないと反論することができます。
どのような場合に商標的使用に当たらないのか、参考として、商標的使用でないとして商標権侵害が否定された裁判例をいくつか紹介します。
巨峰事件(福岡地裁飯塚支判昭和46年9月17日)
・事案の概要
指定商品を「包装用容器」とする「巨峰」の登録商標を有するA社が、「巨峰」の文字を付した包装用容器(段ボール箱)を製造・販売しているB社の行為が商標権侵害に当たると主張した事案。
・判決
B社の製造・販売する段ボール箱に付された「巨峰」の商標は、「段ボール箱の内容物となることが予定されたぶどうの商品名を表示するものであり、段ボール箱の出所を表示するものではなく、…指定商品の出所を識別する機能を発揮して」いないため、商標的使用に当たらないと判断された。
タカラ本みりん事件(東京地判平成13年1月22日)
・事案の概要
指定商品を「しょうゆ、たれ」等とする「タカラ」等の商標を有するA社が、B社の煮魚お魚つゆの容器に「タカラ本みりん入り」と表示して販売した行為が商標権侵害に当たると主張した事案。
・判決
B社の当該商品に、普通名称である「お魚つゆ」等やその用途である「煮魚」等の表示が大きな文字で記載されている一方で「タカラ本みりん入り」は小さい文字で記載されていることから、その内容から、当該商品の説明をしているものと考えられる。
そして、「タカラ本みりん」の商標は日本国内で著名であること、つゆ等の調味料にみりんを入れることは一般的であること等から、「タカラ本みりん入り」との記載は、「右表示部分に接した一般需要者は,右表示部分を被告商品に原料ないし素材として「タカラ本みりん」が入っていることを示す記述であると認識するのが通常である」として、商標的使用に当たらず(かつ原材料を普通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項2号)に当たるとして)、商標権侵害に当たらないと判断された。
不使用取消審判

商標法50条は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者等が登録商標の使用をしていないときは、誰でも商標登録の取消しの審判をすることができると規定しています(商標不使用取消審判)。
したがって、商標権侵害の主張をされた場合でも、他社が商標を日本で3年以上使用していない場合には、商標不使用取消審判を請求し、商標登録が取り消されれば、引き続き商標を使用し続けることができます。
先使用権の抗弁
商標法32条1項は、他社による商標登録出願前から貴社がその商標を使用しており、その商標が自社の商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたときは、商標の使用を続けても商標権侵害にはならないと規定しています(先使用権)。
そのような場合には、先使用権の抗弁の反論をすることができます。
権利の濫用
商標権侵害の主張が、公正な競争秩序の維持という商標法の目的に反する場合には、当該主張は権利濫用として許されません。
権利濫用と判断された裁判例として以下のようなものがあります。
ポパイ事件(東京地判平成11年5月31日)
・事案
「POPEYE」と「ポパイ」の文字の間にポパイの漫画の図形を用いた商標の商標権を有するA社が、B社のポパイの漫画の原作者から複製の許可を得てポパイの漫画の図形と「POPEYE」の文字を組み合わせからなる商標と「POPEYE」の文字のみからなる商標の使用行為に対し、商標権侵害を主張した事案。
・判決
A社の登録商標は、ポパイという「人物像の著名性を無償で利用している」といえ、公正な競争秩序の維持という商標法の目的に照らすと、そのようなA社が、ポパイの漫画の原作者から許可を得て使用しているB社に対し、商標権侵害の主張をするのは、「客観的に公正な競争秩序を乱すもの」として権利濫用に当たると判断した。
まとめ

商標権侵害の主張に対して、どのように反論するのかは、非常に専門的な判断となります。
そのため、商標権侵害を理由に差止請求又は損害賠償請求をされた場合、商標法に強いと弁護士に一度相談することをおすすめします。
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