会社が破産する場合、会社の所有していた動産(在庫商品、材料、什器備品等)は原則として破産管財人が売却して現金に換え、破産財団に組み入れられて債権者への配当の引き当てとなります。本稿では、これら動産の換価方法について弁護士が解説します。

はじめに

破産する会社の業種には様々なものがありますが、会社所有の動産が全くないという会社は皆無でしょう。

ここで想定している動産というのは、例えば、

■在庫商品
■材料
■機械・工具類
■什器備品

などです。

破産手続きにおいて、これらの動産は、原則として破産管財人が売却して現金に換えます

換価された後の現金は、その会社の破産財団に組み入れられて、最終的には債権者への配当原資となります。

本稿では、これらの動産をどのように換価していくのかを見ていきますが、まず、その動産が会社の所有であることを確認して下さい。

当然のことですが、第三者の所有する動産を売却してはいけません

本当はリース品であるパソコンやFAX複合機を、自社が所有するものと勘違いして売却してしまい、リース会社との間でトラブルになるケースもあります。

破産申立ての準備で慌ただしいこともあるでしょうが、自信がない場合は契約書に当たるなどして、所有権の所在はしっかりと確認しましょう。

なお、工場に設置された機械については、工場抵当法との関係で、それらの機械に工場に設定された抵当権の効力が及ぶ場合がありますので、注意が必要です。

換価のタイミング

次に、動産を売却・換価するタイミングを考えてみます。

この点、裁判所から選任される破産管財人がそれらの動産に関する管理処分権限を持つことになりますので、換価するタイミングも、裁判所に破産申立てを行い、管財人が選任された後、管財人が行うというのが原則です。

しかしながら、

■生鮮食品なので、早く売らないと腐ってしまう
■在庫商品が大量にあり、高額な倉庫保管費用がかかり続けてしまう
■流行や季節に左右される衣料品なので、時季を逃すと二束三文になってしまう

という場合、管財人が選任されるのを待っていたのでは、動産が売り物にならなくなってしまい(あるいは、売却益以上の負担が生じてしまい)、債権者への配当の引き当てとなる会社財産が減少する事態になりかねません。

そこで、上記のような場合には、裁判所への破産申立て・管財人の選任を待たずに、申立代理人の関与のもと、破産申立ての前に、適正価格で売却します。

申立前のタイミングで、早期に(高値で)売却することで、会社財産の価値を守ったことになり、そのことが債権者の利益にもなるからです。

換価方法

それでは、いよいよ具体的な換価方法について見ていきましょう。

実際のケースで、具体的にどのような換価方法を採用するかは、

■対象動産の種類・特性・数量
■迅速性
■売却益の最大化
■負担の最小化
■手続の適正性

を総合考慮して決めることになります。

なお、破産管財人が商品の一括売却を行う場合、及び、100万円を超える価額の動産の任意売却を行う場合は、裁判所の許可が必要です。

在庫商品・材料の換価

在庫商品や材料を換価するには、一括売却の方法と個別売却の方法があります。

一括売却の方法は、早期に換価できるのがメリットですが、市場価格より低い金額(いわゆる十把一絡げ)になりがちであるというデメリットがあります。

これに対し、個別売却の方法では、対象物ごとに高値での売却が期待できるというメリットがありますが、売れ残りが生じやすく、それらの保管費用・処分費用の負担が生じるリスクがあるというのがデメリットです。

ともあれ、在庫商品や材料について、適切な販売方法(どこに、どのような売り方をすれば、なるべく高値で換価できるか)を熟知しているのは、それまでその業界で実際に商売をしてきた破産会社の役員や担当従業員の方です。

そこで、申立代理人や破産管財人は、これらの方々の意見やアドバイスを聞きながら、できる限り多くの売却先を模索し、時には入札方式を採用するなどして価格を競わせ、1円でも高く換価するよう努めていきます。

衣料品や食器、家具などの在庫商品が大量にある場合で、通常の販売価格より値下げして販売することで売り切りを見込める場合には、バーゲンセールを行って換価する方法もあります。

なお、食料品については、それまでの保管状況や消費期限との関係で、売却せずに廃棄せざるを得ないこともあります。

機械工具類・什器備品の換価

機械工具類については、個別売却の方法がとられることが多いです。

あまりに特殊なものについては、流通性が乏しく、思ったような値がつかないこともありますが、同業者や製造取引先等に売却を打診するなどして、適切な価格で売却・換価するようにします。

什器備品については、個別売却の方法だと効率が悪く、全体を換価するのに時間がかかるため、一括売却の方法がとられることが多いでしょう。

使用済みのオフィス用品などはあまり高値では売れませんが、その場合でも、必ず複数社の見積もりをとって、最も高い金額をつけた業者に売却します。

なお、パソコンについては、中身のデータ(顧客や取引先の情報)の処理を忘れないようにして下さい。

個人情報や営業秘密に関わるところですので、確実に消去したうえで売却するか、データ消去も含めて信頼できる引き取り業者に依頼する必要があります。

対象動産が生き物の場合

破産する会社がペットショップや養鶏場、養豚場などを経営していた場合、換価の対象となる動産の中に、生き物が含まれていることがあります。

生き物の場合、破産申立ての慌ただしさに紛れて管理がおろそかにならないよう、細心の注意を払う必要があります。

飼育環境が劣悪になり、その結果、生き物の健康状態が悪化して死なせてしまうようなことになれば、悪臭など周辺環境の悪化や、産業廃棄物としての死骸処理の問題が生じるためです。

良好な管理を継続しつつ、可及的速やかに、同業者や愛好家への売却を進めます。

場合によっては、事業体を維持したままで、事業譲渡による(生き物も含めた)一括売却も検討に値するかもしれません。

どうしても換価できないものはどうする?

会社の所有する動産の全てが綺麗に売却・換価できればよいのですが、中には値がつかず、どうしても換価できないものが残ってしまうことがあります。

「古過ぎる」、「故障していて修理に多額の費用がかかる」、「価値はあるものの搬出と再設置にそれ以上の金額がかかる」などの理由で、売れないのです。

そうした売れない動産をいつまでも持ち続けることは、賃貸物件の明渡しの遅延、保管費用の増大などの観点から望ましくないことです。

かえって会社財産の減少を招き、債権者にとっても不利益となります。

そのため、どうしても換価できないこのような動産については、ある程度のところで見切りをつけて、

■同業者等に無償で引き取ってもらう
■会社財産から処分費用を支払って処分する

のどちらかの方法により処理することになります。

なお、賃貸物件の内部に机や椅子、ロッカーなど大量の什器備品が残っているにもかかわらず、それらを撤去・処分するだけの費用が用意できない場合に、賃貸人との間で、それらを残置したままでの明渡しを認めてもらうよう交渉することもあります。

つまり、大量の什器備品の撤去費用を賃貸人に負担してもらうよう、頭を下げてお願いするということです。

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■この記事を書いた弁護士

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 田中 智美

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