
ネット上の広告が普及した現代では、ネット広告についても景品表示法上の規制にかからないか注意が必要です。
特に、コンプガチャなどについては、景品表示法違反の事例も多く見られますので、事業者としては、規制をよく知っておくことが重要です。
1 はじめに:現代ビジネスにおける景品表示法遵守の戦略的意義

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の目的は、一般消費者が「自主的かつ合理的な選択」を行える環境を保護することにあります。
この法律が制定された歴史的背景には、1960年の「ニセ牛缶事件」があります。牛缶と称しながら中身は馬肉や豚肉であったという欺瞞的な表示が社会問題となり、消費者の利益を直接的に守るための法整備が急務となったのです。
企業にとって景表法の遵守は、単なる行政処分の回避にとどまりません。消費者が商品やサービスの質・価格を正しく判断し、「より良いものをより安く」提供する健全な競争を維持することは、企業のブランド価値と顧客信頼を維持するための戦略的基盤です。不当な表示や過大な景品による「不当な顧客誘引」は、短期的には利益をもたらすかもしれませんが、中長期的には市場全体の信頼を損ない、自社のブランドを自ら破壊する行為に他なりません。
2 なぜ「カード合わせ」と「コンプガチャ」は全面禁止なのか

「カード合わせ(符票の特定の組み合わせ)」とは、2種類以上の異なる絵柄や文字などが書かれた符票のうち、特定の組み合わせを提示させることで景品を提供する手法です。この手法は、あと一歩で揃うという期待感からくる確率の錯覚を利用し、消費者の射幸心を過度に煽る欺瞞性が強いとされています。そのため、1977年より景品類の最高額や総額にかかわらず、全面的に禁止されている極めて厳格な規制です。
2012年に大きな転換点となった「コンプガチャ騒動」では、デジタルアイテムを用いた手法が以下の3要素を満たすことから、違法な「カード合わせ」に該当すると判断されました。
景品類の提供: 有料ガチャという取引への誘引手段として、レアアイテムという「経済上の利益」を提供していた。
符票の特定の組み合わせ: 端末画面上のデジタルアイテムも「符票」に該当し、「異なる種類」の組み合わせを条件としていた。
懸賞による提供: どのアイテムが出るか分からない偶然性(ガチャ)を利用していた。
ここで実務上の重要な境界線となるのが、「同一の符票(同じアイテム)を複数集めさせる」ケースです。例えば、「1点券という同じ種類の券を10枚集める」といった企画は、異なる種類の組み合わせではないため「カード合わせ」には該当しません。
このように、景品の提供方法には厳格なルールが存在しますが、消費者が最も頻繁に接する「表示」そのものにも、複雑なリスクが潜んでいます。
3 「優良誤認」と「有利誤認」の識別:誤認を招く表示のメカニズ
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景表法における不当表示は、消費者が「内容(品質・規格)」を誤解するのか、あるいは「取引条件(価格)」を誤解するのかによって、大きく2つに分類されます。
(1)優良誤認表示
実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示です。特に注意すべきは「不実証広告規制」です。
【実務上の運用要件】 消費者庁から表示の裏付けとなる根拠資料の提出を求められた場合、事業者は原則として15日以内に提出しなければなりません。提出されない、あるいは提出された資料に合理的な根拠がないと判断された場合、その表示は不当表示とみなされます。
(2)有利誤認表示
価格等の条件を実際よりも著しく有利に見せる表示です。実務上、最も違反が起きやすいのが「二重価格表示」であり、以下の3つの基準をすべて満たす必要があります。
①最近相当期間の販売実績: 最近8週間のうち、その価格で販売された期間が過半数(4週間超)を占めていること。
②通算期間: その価格で販売されていた期間が通算2週間以上であること。
③直近の販売実績: セール開始時点で、その価格で販売された最後の日から2週間以上経過していないこと。
これらの基準を満たさない比較価格の提示は、有利誤認として措置命令の対象となります。また、表示のメインメッセージを補足するはずの「打消し表示」が、逆にリスクを増大させている現状にも警鐘を鳴らす必要があります。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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この記事を書いた弁護士:弁護士 権田健一郎
景品表示法
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。令和2年登録後、景品表示法の相談等を多数取り扱う。二重価格表示、打消し表示と強調表示、不実証広告規制などの大きな論点から、ステルスマーケティング・アフィリエイト広告などの近年活発になっている論点についても研究を重ねている。消費者庁主催の景品表示法セミナーを受講しており、最新の論点についても常にフォローしている。









