「競合他社が、実際は外国産の原料を使っているのに『国産』とうたっている」、「有機認証を受けていないのに『オーガニック』と表示して売上を伸ばしている」

このような相談は珍しくありません。事実と異なる表示で顧客を奪われれば、正直に表示している事業者は大きな不利益を受けます。

こうした不当表示への対抗手段には、主に次の2つがあります。

・不正競争防止法(以下「不競法」)2条1項20号の「誤認惹起行為」を理由に、差止めや損害賠償を求める方法
・景品表示法(以下「景表法」)の優良誤認表示・有利誤認表示を理由に、消費者庁などの行政処分を促す方法

どちらも「誤解を招く表示」を問題にする点は同じです。しかし、制度の目的、使える人、得られる結果が大きく異なります。本コラムでは、競合他社の立場から見た両制度の違いと使い分けを整理します。

1 「自分で戦う」か「行政に動いてもらう」か

最も大きな違いは、誰が手続の主体になるかです。

■不競法
公正な競争の確保を目的とする法律であり、不正競争によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある事業者に、民事上の請求権を与えています(3条・4条)。
また、競合他社は自ら原告となり、裁判所に差止めや損害賠償を求めることができます。

■景表法
一般消費者の自主的かつ合理的な商品選択を守るための行政規制であるため、処分を行うのは消費者庁(都道府県知事も措置命令を出せます)です。競合他社には、処分を求める法的な申立権がありません。できるのは、違反の疑いがある事実を行政に情報提供(申出)することにとどまります。
また、調査を行うか、処分を出すかは行政の裁量です。申出をした事業者に調査の経過や結果が個別に知らされる仕組みもありません。

つまり、自社でコントロールできる手続が不競法、行政に動いてもらう手続が景表法という違いがあります。

武器その1:不正競争防止法で「自ら」止める

(1) 「国産」「オーガニック」はどこに当たるか

不競法2条1項20号は、次のような表示を不正競争としています。

・対象となる事項:商品や役務(サービス)の広告・取引に使う書類・通信における、原産地、品質、内容、製造方法、用途、数量など
・対象となる表示の内容:これらについて誤認させるような表示
・対象となる行為:そうした表示をすること、その表示をした商品を譲渡すること、その

表示をして役務を提供することなど

「国産」は原産地、「オーガニック」は品質や製造方法、「完全自社開発」は製造方法や内容に関する表示として、対象になり得ます。

また、景表法と異なり一般消費者向けの取引に限られないため、事業者間取引での表示も対象になります。

(2) 差止め・損害賠償・信用回復:3つのカード

・表示の差止め・除去(3条)
・損害賠償(4条)
・信用回復措置(14条)

差止めは、相手方に故意や過失がなくても認められます。緊急性がある場合は、仮処分を申し立てることも考えられます。

(3) 注意すべき「価格」・「損害額」・「立証責任」

第一の注意点は価格です。

価格は20号の列挙事項に含まれていません。

そのため、架空の「通常価格」との比較で安く見せる二重価格表示のような価格の不当表示は、原則として20号では捉えにくいといえます。この点が景表法の有利誤認表示との大きな違いです。

第二の注意点は損害額の立証です。

損害額の推定規定(5条2項。侵害者が得た利益を損害額と推定するもの)は使えます。

しかし、市場に他の競合品が多い場合は、相手方の売上がそのまま自社の逸失利益になるとはいえません。推定が覆されたり、減額されたりする場面が少なくありません。

第三の注意点は立証責任です。

表示が真実でないことの立証責任は、原則として請求する側にあります。

もっとも、相手方の原料調達や開発体制は、外部からは見えないことが多い事項です。

自社で証拠を集めるには限界があり、訴訟提起前の調査に相応の労力と費用がかかります。

武器その2:景品表示法で「行政の力」を借りる

(1) 優良誤認表示・有利誤認表示とは?

■優良誤認表示(5条1号)
・商品・役務の品質や規格などについて、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
・事実に反して競業者のものよりも著しく優良であると示す表示

■有利誤認表示(5条2号)
・価格その他の取引条件について、実際のものや競業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

このほか、内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)もあります。その一つである「商品の原産国に関する不当な表示」の告示は、原産国表示の問題で重要です。

(2) 「根拠を出すよう求めることができるのは行政だけ

消費者庁は、優良誤認表示の疑いがある事業者に対し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。

期間内(原則15日)に資料が提出されなければ、措置命令との関係では優良誤認表示とみなされます(7条2項)。課徴金との関係でも、優良誤認表示と推定されます(8条3項)。

「完全自社開発」「〇〇成分で効果あり」のように、外部からは真偽を確かめにくい表示では、民事訴訟よりも格段に強力な手段です。

4 「国産」「オーガニック」「完全自社開発」:ケース別の攻め方

■「国産」表示
不競法20号の原産地誤認と、景表法(原産国告示や優良誤認表示)の双方が問題になり得ます。
食品であれば、食品表示法上の原料原産地表示の問題としても検討します。

■「オーガニック」表示
農産物や加工食品などでは、JAS法に基づく有機JASの認証を受けずに「有機」「オーガニック」と表示することが規制されています。
そのため、所管行政への情報提供という選択肢も加わります。
規制の対象外の商品(化粧品や衣料品など)では、表示の意味内容と実態との違いを、不競法または景表法の枠組みで個別に検討することになります。

■「完全自社開発」表示
外部委託や他社製品のOEMであることを、競合他社が証拠で示すのは容易ではありません。
不実証広告規制が働く景表法ルートとの相性がよい類型です。

まとめ

注意したいのは、対抗する側自身が不競法違反を問われるリスクです。

十分な裏付けがないまま、相手方の取引先に「あの会社の表示は虚偽だ」と伝えると、事実によっては、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布(営業誹謗。2条1項21号)に当たるおそれがあります。

不当表示への対抗は、どの法律で、誰に、何を求めるかによって、得られる結果とかかる負担が大きく変わります。表示の種類、手元にある証拠、目指すゴール(損害の回復か、市場の是正か)に応じて、最適な手段を組み合わせることが重要です。

競合他社の表示に関するご相談のほか、自社の広告表示が法令に適合しているかどうかの確認についてお悩みの場合は、弁護士にご相談ください。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 安田伸一朗

不正競争防止法

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所、埼玉弁護士会所属。令和4年の登録以来、営業秘密の漏洩や商品形態の模倣、混同惹起行為など、不正競争防止法が関わる複雑な紛争解決に注力。