このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事しているオーナーや管理会社に向けて、マンション・アパート経営における管理業務(自主管理・委託管理)について、有益な情報を提供しております。

はじめに

このページでは、埼玉県で30年以上、不動産事件を扱ってきた法律事務所の弁護士が、不動産賃貸管理に従事しているオーナーや管理会社に向けて、マンション・アパート経営における管理業務(自主管理・委託管理)について、有益な情報を提供しております。

マンション経営者・アパート経営者(=賃貸向けのマンションやアパートを所有している方)が経営をするためには、単に、マンションやアパートを持っていればよいということではありません。
住宅街をイメージしてください。自宅の管理は自分で行いますが、共同利用する道路やゴミ置き場等は自治会を作って管理していますね。

マンションやアパートにおいても、人々が集合して居住する一つの建物をどのように管理するかが問題となります。
快適に住むためには、適切な管理をすることが欠かせません。適切に管理されていれば、居住者が絶えず存在し、安定した経営が可能となる一方、不適切な管理ですと、建物自体の汚染や老朽化が進み、住み心地が悪化することで入居者離れに繋がり、不安定な経営状態に陥ることでしょう。

例えていうならば、人体には、多くの臓器があります。脳、心臓、肺、肝臓、腸・・・これら一つ一つが健康でも、それらを繋ぐ血管、血液に支障が生じた場合、全身に悪影響を及ぼすことになります。

マンション経営、アパート経営においては、この血管や血液に当たる共用部、電気ガス水道のインフラ、ゴミ置き場、外観をいかに整えるかが問われているといっても過言ではありません。

したがって、アパート経営やマンション経営において、【管理業務】が重要であることはお分かりいただけたと思います。

前置きが長くなりましたが、まずは、管理形態についてご説明し、次に、管理業務について簡単にご説明します。

マンションやアパートの管理形態について教えて弁護士さん!

マンションやアパートのオーナー様の視点では、3パターンのみ覚えておいていただければと思います。
Aさん、Bさん、Cさんの例を見てみましょう。

全部委託

Aさん「お金は払うから、いっさいがっさいプロに任せたい。」
→【全部委託】といいます。
後で触れるように、管理業務は建物のビルメンテナンス面とプロパティマネジメント面とがありますが、清掃、点検、衛生管理・・・自分で行うのはとても大変ですよね。そんな時間があるなら別のことに使いたい。それなら、プロのサービスに任せてしまいましょう、ということで、すべての業務を委託するパターンです。デメリットは、コンスタントに管理費用、いわばランニングコストが発生する点ですが、メリットは、プロがすべてやってくれるので「楽」であり、かつプロの施工のためミステイクが少ないことから管理業務が高水準で遂行できることがあげられます。

部分委託

Bさん「掃除は自分でできるから、設備点検などの一部をプロに任せたい。」
→【部分委託】といいます。
管理業務には、さまざまな種類があります。マンションやアパートの立地、規模などによっては、この業務は自分でできるけど、この業務は大変だから任せたい、というように、部分的に、業務の一部をプロに任せるというパターンです。メリットは、費用の一部を節約できることにありますが、デメリットは、自主管理部分には手間暇がかかり、ミステイクを誘発する可能性があることです。

自主管理

Cさん「規模も小さいし、何より費用がもったいない。全て自分でやりたい。」
→【自主管理】といいます。
管理業務すべてを自分で行うことを意味します。
ある程度の規模のマンションではとても難しいので、小規模なアパートでは考えられるパターンです。
なお、最近は、法人がアパートやマンションのオーナーであるケースもあり、自身のグループ会社を通じて保守管理を行うこともありますが、(グループとはいえ)別会社同士ですので、厳密には、委託による管理であり、自主管理ではありません。

統計

統計上、面白いデータがあります。
全国のマンションのうち、

Aさんのように全部委託しているマンション=72.9%
Cさんのように自主管理しているマンション=6.3%

平成25年度「マンション総合調査」(国土交通省)

ということから、圧倒的に全部委託】の割合が高いことが分かります。

マンション管理・アパート管理の業務内容を教えて弁護士さん!

「そもそも、マンションやアパート経営における管理業務とは何ですか?」
という質問について、ご回答します。

二つの管理業務について

結論から申しますと、①ビルメンテナンス業務(建物や設備のメンテナンス)、②プロパティマネジメント業務(入居者対応等のマネジメント)、この二つの業務(サービス)から成り立ちます。

①ビルメンテナンス業務とは?

ビルメンテナンス業務とは、マンション、アパート、一戸建て、賃貸物件にはいくつかありますが、それらの建物、及びその敷地(土地)を管理する業務です。

例えば、以下のような業務一覧があります。

清掃業務

玄関や廊下、エレベーター等の共用部が清潔に保つ。

衛生管理

ゴミ置き場の設置、清掃し、衛星を確保する。

保守管理

エレベーター、消火設備、非常ベル等の安全を日頃から点検し、建築基準法及び消防法に則り法定点検を実施し、安全を確保する。

補修

利用による経年劣化等により外壁、内装、給水・排水、ガス・電気等の設備について、補修工事、設備交換工事を実施する。

大規模修繕計画

一定期間後、大規模修繕に向けて計画立案、修繕工事の管理を行う。

原状回復工事等

賃借人が退去した後の原状回復工事等を実施する。

ビルメンテナンス業務を行うには、様々な外注先を確保するほか、建築基準法、消防法、原状回復におけるガイドライン、その他関係法規の知識、理解が必須であり、建物に関する知見も求められます。
ビルメンテナンスを怠れば、新規入居者減少、退去が相次ぐなどし、空き室が目立つと益々人気が下がりますので、オーナーにとっては致命的です。

②プロパティマネジメント業務について

プロパティマネジメント業務(略してPM業務)とは、マンション、アパート等の賃貸住宅に入居している契約者である賃借人、テナントに関する管理を行う業務です。

例えば、以下のような業務一覧があります。

空室の入居者募集業務

どのような募集方法(不動産サイトの掲載、写真撮影等)を活用するか、リーシングプランを立案し、仲介業者の選定、営業、紹介等の様々な方法により入居者を募集する業務です。

賃貸借契約の締結等の契約業務

賃貸借契約の締結に必要な、賃貸借契約書、重要事項説明書、個人情報等の同意書、住宅紛争防止条例に基づく説明書等、さまざまなトラブルに対処できるように契約書類を準備する業務です。

賃料(家賃)の回収に関する業務

賃料(家賃)の回収、入金との突合せ、滞納者に対する催促や家賃保証会社に対する報告等を行う業務です。

入居者からのクレーム等に対処する業務

入居者から、賃貸物件の故障等の連絡、トラブル(騒音、ゴミ、振動、入居者間の事故等)、クレーム対応につき、対処等を行う業務です。

更新業務

更新時期が近づくと更新の案内を出すほか、更新に際して変更事項の合意、覚書を作成する必要があれば作成する、更新料を請求・受領する等の業務です。

解約受付、建物明渡の立会業務

解約の受付、明渡日の決定、立会等を行う業務です。退去時の状態を賃借人ときちんと確認し、修繕、原状回復が必要な範囲を合意するのも重要な業務でしょう。

不良入居者に対する対応業務

賃料を支払わない、その他問題のある不良入居者に対して、催促、解約、退去等を進めるための対応を検討する業務です。

プロパティマネジメント業務を行うには、様々な外注先を確保するほか、民法、借地借家法、原状回復におけるガイドライン、その他関係法規の知識、理解が必須であり、建物に関する知見も求められます。
ソフト面全般を担当するこの業務を怠れば、様々な法的トラブルに見舞われ、一気に不採算物件となるでしょう。

弁護士がおすすめする管理形態について

さきほど触れましたとおり、マンションの大半が、全部委託により、管理業務をプロに委ねております。これは、管理がいかに大変であるかの裏返しと思います。そのため、基本的には、餅は餅屋、不動産管理は管理会社に委ねるのが安全かと思います。
もっとも、賃貸住宅管理業者登録数は、平成27年8月末の段階で3689業者に上ります(国土交通省調べ)。
そのすべてが優良といえるかどうかは分かりませんので、管理委託する際には、まずは、契約書の内容を精査することが大変重要になります。
令和2年「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理適正化法)」が制定されました。これにより、賃貸住宅管理業登録制度の運用が義務化されることとなりましたので、以下のような標準的な契約内容と比較してみるのをおすすめします。

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会HPより
賃貸住宅標準管理委託契約書(平成30年国土交通省策定)

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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