不動産賃料について、さいたま市大宮区で30年以上の歴史を持ち、不動産に関する法律相談に注力し、また「不動産専門チーム」を擁する弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が解説を行います。

2022年11月現在のオフィス賃料・空室率について

都心のオフィス賃料の傾向

各種報道によれば、2022年11月現在の都心のオフィス賃料は、下落傾向が続いているということです。
各シンクタンク・報道の結果は概ね同様で、2019年12月~2020年7月頃をピークとして低下する状況となっています。
中でも、あるシンクタンクの調査結果では、同時期と比較して40%程度も下落しているところもあります。

都心のオフィス空室率の傾向

同様に、各種報道によれば、2022年11月現在の都心のオフィス空室率は、低下傾向が続いているということです。
各シンクタンク・報道の結果は概ね同様で、2019年~2020年頃には1%から2%の間程度でした。
しかし、現在では、平均空室率は4~6%程度となっています。
そして、あるシンクタンクの調査では、既存ビルの空室率には改善傾向がみられるものの、新築ビルの空室率は40%近い状況が続いており、新築ビルの空室率が3パーセントを切っていた2019年春と比較すると、隔世の感があるという状況です。

賃料増減額請求

一般的な契約書

多くの賃貸借契約書では、賃料の増減については、
・近隣相場の変動
・公租公課の変動
の場合に認められることが規定されていると思われます。
ただし、中には、賃料不減額(不増額)特約が定められていることもあります。

賃料不増額特約

これは、賃借人保護という借地借家法の趣旨にかなうものであり、一般に有効とされています。
但し、長期間の不増額や経済情勢の想定外の変動などの事情があると認められた場合に、賃料増額が認められた裁判例もあります。

賃料不減額特約

他方、これは、賃借人保護という借地借家法の趣旨に反する特約ということになります。
これが争われた最高裁判例(平成16年6月29日判決)は次のように述べ、賃料減額請求を認めました。

本件各賃貸借契約には,3年ごとに賃料(月額。以下同じ。)の改定を行 うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租 公課の増減額を加算又は控除した額とするが,消費者物価指数が下降したとしても ,それに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約(以下「本件特約」という。) が付されている。…
本件各賃貸借契約には,3年ごとに賃料を消費者物価指数の変動等に従って改定 するが,消費者物価指数が下降したとしても賃料を減額しない旨の本件特約が存す る。しかし,借地借家法11条1項の規定は,強行法規であって,本件特約によっ てその適用を排除することができないものである(最高裁昭和28年(オ)第86 1号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和5 – 3 – 4年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656 頁,最高裁平成14年(受)第689号同15年6月12日第一小法廷判決・民集 57巻6号595頁,最高裁平成12年(受)第573号,第574号同15年1 0月21日第三小法廷判決・民集57巻9号1213頁参照)。したがって,【要 旨】本件各賃貸借契約の当事者は,本件特約が存することにより上記規定に基づく 賃料増減額請求権の行使を妨げられるものではないと解すべきである(上記平成1 5年10月21日第三小法廷判決参照)。

但し、定期借家契約の場合にはこれが妥当するわけではないので注意が必要です。

もしも賃料減額請求がなされたら

通知書が届いた場合

オーナーの立場において、もし仮に賃借人から賃料減額請求がなされたらどうするべきか。
まずは、非常に一般的ですが、交渉をするということになります。
コロナ禍という一時的な事情であること、上記で見たように既存空室率は低下傾向にあることなど、オーナー側に有利な事情を提示し、賃借人に納得してもらうようにします。

調停

交渉で合意できない場合には、賃料の変更を請求する側(本件では、減額を求める側)が調停を提起するものと考えられます。
調停は裁判所を利用する手続ではありますが、話し合いの手続ですので、ここでも、オーナー側に有利な事情を提示し、場合によっては鑑定なども行い、調停委員を通じて賃借人を説得することになります。

訴訟

調停でも交渉が成立しなかった場合、賃料の変更を請求する側(本件では、減額を求める側)が訴訟を提起するものと考えられます。
訴訟も裁判所を利用する手続ではありますが、基本的には、双方の主張と証拠に基づき裁判官が判断する手続ですので、オーナー側に有利な事情や証拠を積極的に提示し、鑑定なども行い、裁判官に有利な心証を抱かせることが必要になります。

もしも敗訴してしまったら

この場合、土地地代については借地借家法11条3項が、建物賃料については借地借家法32条3項が、それぞれ定めています。
借地借家法11条3項

地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

借地借家法32条3項

建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

賃料減額請求とグリーンリーフ法律事務所

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の特徴

開設以来数多くの不動産に関する案件・相談に対応してきた弁護士法人グリーンリーフ法律事務所には、不動産に精通した弁護士が数多く在籍し、また、不動産専門チームも設置しています。
宅地建物取引士向けの法定講習講師を担当している他、マンション管理士、マンション管理業務主任者、宅地建物取引主任者試験(現・宅地建物取引士)に合格した弁護士も在籍しています。
埼玉県内の不動産業者の皆様を会員とする「アネットクラブ」も主宰しています。
このように、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所・不動産専門チームの弁護士は、不動産案件や不動産に関する法律相談を日々研究しておりますので、賃料減額請求に際しても、自信を持って対応できます。

アネットクラブとは

アネットクラブとは、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所が主催する、埼玉県内の宅地建物取引業者の皆様を会員とするクラブです。
アネットクラブの会員からの法律相談をお受けしている他、アネットクラブ会員様のお客様の来所法律相談も初回無料としています。

最後に

不動産業者の皆様は、ぜひ、弁護士法人グリーンリーフ法律事務所のアネットクラブへのご加入や顧問契約の締結をご検討ください。
不動産案件・相談に精通した弁護士が回答いたします。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 野田 泰彦
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