このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、会社の定款を変更する場合における会社法上の手続について、株主・取締役に向けて、有益な情報を提供しております。
具体的には、定款変更には、株主総会特別決議を要するのが原則ですが、株主の利害にとって重要ではない株式分割や単元株制度の採用などには普通決議や取締役会で決することが可能な例外もあります。

定款変更には原則として株主総会特別決議が必要

株式会社における定款の変更については、原則として、株主総会の特別決議を要します(会社法466条、・同309条2項11号)。

株主総会の特別決議とは

株主総会の特別決議とは、会社法309条2項に定めがあります。
簡単にいうと、株主の議決権の過半数が出席し、かつ、出席した議決権の3分の2以上の賛成があって初めて承認されます。

例えば、70%の株式を有する株主がいれば、その株主が出席し賛成すれば可決しますが、60%の株式を有する株主とそれ以外の40%に相当する株主が出席し60%の株主のみが賛成しそれ以外が反対すれば特別決議は可決しません。
なお、中小企業でたまにあるのは、50%ずつ株式を保有している場合です。この場合、もちろん両方が賛成しないと特別決議は可決しませんし、普通決議すら成り立たないこともあり、このような株式の配分には注意が必要です。

会社法309条2項

当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。十一 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会

招集通知

株主総会の開催には招集手続(書面または電磁的方法)が必要となり、定款の変更に関する議案の概要を記載することになります(会社法299条4項・298条1項5号)。

定款変更のうち例外的に特殊決議が必要な場合

前述のとおり、原則として、定款の変更は株主総会の特別決議が必要であると述べましたが、それでは足らず、さらに厳しい要件が課される株主総会の特殊決議が求められる場合も例外的にあります。
これは、株主の利害に大きく関係することに由来します。

特殊決議が求められる定款の変更内容

一つは、会社が発行する株式の全部を譲渡制限株式に変更する場合です。この場合、反対する株主には、株式買取請求権が認められます(会社法116条1項1号)。

一つは、全株式譲渡制限会社が剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会の議決権について属人的な定め(会社法109条2項)をする場合です。

株主総会の特殊決議とは

株主総会の特別決議とは、会社法309条3項に定めがあります。
簡単にいうと、株主の半数以上が出席し、かつ、出席した議決権の3分の2以上の賛成があって初めて承認されます。

会社法309条3項

当該株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
一 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款の変更を行う株主総会
二 第七百八十三条第一項の株主総会(合併により消滅する株式会社又は株式交換をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等(同条第三項に規定する譲渡制限株式等をいう。次号において同じ。)である場合における当該株主総会に限る。)
三 第八百四条第一項の株主総会(合併又は株式移転をする株式会社が公開会社であり、かつ、当該株式会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合における当該株主総会に限る。)

定款変更につき例外的に取締役会の決議で足りる場合

株主の保護に問題が生じにくい場合には、例外的に、定款変更につき取締役会の決議で足ります。
具体的には、会社が株式の分割を行う(例:1株を2株にする)際に、定款に定める発行可能株式総数を株式の分割割合に応じて増加させるような場合です。また、単元株制度を採用、一単元の株式の数を変更する場合にも、それらにより株主の有する議決権数が減少するなどの不利益が生じない場合には、取締役会の決議で足りると考えられます。

種類株式発行会社における例外

種類株式発行会社とは(会社法2条13号)

種類株式発行会社 剰余金の配当その他の第百八条第一項各号に掲げる事項について内容の異なる二以上の種類の株式を発行する株式会社をいう。

同108条1項各号

一 剰余金の配当
二 残余財産の分配
三 株主総会において議決権を行使することができる事項
四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
五 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
八 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。

種類株式発行会社における特殊性

種類株式発行会社では、通常の定款変更決議に加えて、以下の手続が必要となります。
・ある種類の株式を譲渡制限株式または全部取得条項付種類株式とする定款変更を行う場合
→影響を受ける種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要

・株式の種類の増加、株式の内容の変更、発行可能株式総数・発行可能種類株式総数の増加をする定款変更を大なう場合であっていずれかの種類の株式に損害を及ぼす恐れがある場合
→影響を受ける種類株主を構成員とする種類株主総会の決議が必要

・発行する全部の株式を取得条項付株式とする定めを新設又は変更する場合、特定の株主からの自己株式取得につき売主追加請求権を排除する定めを新設又は変更する場合
→株主全員の同意が必要

・種類株式発行後、当該種類株式を取得条項付種類株式としまたは定款を変更する場合、当該種類株式を特定の株主から会社が自己株式取得するときに売主追加請求権を排除する定めを新設または変更する場合、当該種類株主に損害を及ぼす恐れがある行為をするときも種類株主総会決議を要せず株式買取請求権を付与する定款の定めをする場合
→種類株式を有する株主全員の同意が必要

定款により決議要件を重くする(加重)ことの可否

たまに、定款が簡単に変えられないようにするため要件を重くすることはできるか?という質問をいただきます。
結論としては、株主総会の特別決議により可能です(会社法309条2項参照)。
ただし、たとえば、“定款の変更を行うには総株主の同意を要する”などと定めることはできないと考えられます(決議取消自由に該当します。江頭憲治郎「株式会社法」)。

いつの日付で改訂した定款の効力を有するのか

定款の変更の効力発生日は、定款変更の決議(通常、株主総会特別決議。会社法466条、309条2項11号)により定めることができます。
従って、定款変更の決議を行った際に、効力発生日を定めればその日、定めなければ決議の日から効力が発生するという理解で宜しいかなと思います。
※非常に細かいですが、特例有限会社が商号変更して株式会社に移行するような定款変更の場合には、登記によるその効力が生じるという例外もあります(会社法整備法46条、136条19項~21項)。

取締役会のない会社における株主総会の決議事項について

先ほど、取締役会の決議で足りる場合について触れましたが、取締役設置会社でない会社では、株主総会が、会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項につき決議することが可能です(会社法295条1項)。
また、株主総会の招集者は、会議の目的として定めた事項以外の事項も決議できます(同309条5項対照)。

なお、取締役の役割としては、株主総会の決議内容が妥当ではないと判断したとしても、原則としてこれに従う義務があると考えられますが、違法な決議であれば従う必要はなく(同830条2項)、場合によっては取消訴訟を提起する義務が生じます(同831条1項2号~3号)。

定款の確認手段について

会社法上、定款は会社の本店及び支店に備え置かなければなりませんので、会社にある定款が参考になりますが、それ以外に、客観的に確認する手段としては、①会社設立時のものであれば公証役場に保管されているものの謄写が可能です(ただし、保管は20年間のみ)。また、②登記されているものは、法務局に登記申請時に提出しているため当社が可能です(ただし、保管は10年間のみ)。③登記等は司法書士に依頼されるでしょうから、司法書士に問い合わせれば、事実上これまでの定款変更の経緯をご存じかもしれません。
なお、ご指摘の公告方法としての官報は、定款を丸ごと掲載しているわけではありません。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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