株式会社に関わる会社経営者の方に向けて、株式の分割の手続を解説します。株式の分割は、発行済みの株式を細分化する手続です。上場企業などで行われるケースが多いですが、会社の財産に変動は生じないため、株主総会普通決議(取締役会設置会社の場合取締役会の決議)により定めることが可能です。このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、会社法の定める株式の分割の手続についてポイントを絞って分かりやすく解説します。

はじめに

株式の分割とは、発行済みの株式を細分化することを指します。

例えば、今ある1株を2株にする、という具合です。

では、会社においてどのような手続が必要となるでしょうか。

このページでは、埼玉県で30年以上、企業法務を扱ってきた法律事務所の弁護士が、会社法の定める株式の分割の手続についてポイントを絞って分かりやすく解説します。

株式の分割のための手続について

決議の種類

株式の分割をするためには、以下の手続が必要です。

株式の分割は、株主の利益を害するおそれがないため、特別な決議等は必要ありません。

・取締役会設置会社の場合
→取締役会決議でOK

・取締役会非設置会社の場合
→株主総会普通決議でOK(※1)

※1 普通決議 → 定足数:過半数、賛成数:その過半数

普通決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成により成立します(会社法309条1項)。

決議の内容

上述の決議により定めるべき内容は、以下のとおりです。

会社法183条2項に記されております。

・分割により増加する株式の総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合(分割比率)および基準日(※2)

・分割の効力発生日

・(種類株式発行会社の場合)分割する株式の種類

※2 基準日とは、株式の分割の効力発生日に株式数に分割比率を乗じた数の株式を取得することとなる株主名簿に記載又は記録された株主を特定する日付をいいます。基準日と効力発生日とは、同一の日付とすることが多いです。

公告の手続が必要

会社は、決議に加えて、株式の分割の基準日の2週間前に、決議した事項を公告しなければなりません(会社法124条3項)。

効力発生後は株主名簿の記載が必要

会社は、株式の分割の効力発生後の株主の株式数などを株主名簿に記載することになります(会社法132条1項1号・3項)。

全株式譲渡制限会社以外の株券発行会社の場合には株券の発行が必要

昨今は株券不発行会社が主流とはいえ、全株式譲渡制限付きの会社以外の株券発行会社の場合には、株券を追加発行し、当該株主に交付する必要があります(会社法215条3項)。

登記変更が必要

株式の分割の効力発生後、変更登記を忘れないようにご注意ください(会社法911条3項9号)。

株式の分割がなされるとどうなりますか?

既存の株主は、株式を持ち株数に比例して追加で取得することができます(会社法184像1項、187条1項)。

中には、かつて1株だったものが年月をかけて600株になっていた(相続の時に判明した)、なんというケースも存在します。

既存の株主は、特に株券を会社に提出するなどの手続も不要です。

おわりに

以上、簡単ではありますが、株式の分割について、解説して参りました。

基本的には、会社法にその具体的な定めが書かれておりますが、司法試験で会社法を勉強した私どもは慣れているとはいえ、会社法は条文数がとても多く、難解な構造になっていることから、少しでもお悩みや分からないことがありましたら、会社法に詳しい弁護士にご相談いただけたらと思います。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 時田 剛志
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