下請け業者との価格交渉でやってはいけないことは?

下請法は、親事業者の下請業者に対する一定の行為を禁止しています。

下請事業者に対して価格交渉をすることも、下請法に違反する可能性があります。

とはいえ、下請事業者と相談して、価格について見直しをすることが必要になる場面もあるかと思います。

そこで、下請事業者と価格交渉をする際にやってはいけないこと、注意すべき事項について解説いたします。

下請法に反する場合とは

下請法に反する場合とは

下請法は、下請事業者への「買いたたき」を禁止しております。

「買いたたき」とは、通常支払われる対価より著しく低い下請代金の額を「不当に定めること」を言います(下請法4条1項5号)。

親事業者としては、価格を見直すために下請事業者に連絡を行ったものの、それが買いたたきに該当して下請法に違反すると言われてしまうことも十分にあり得ます。

そのため、買いたたきにあたらないように慎重に交渉を行う必要があります。

買いたたきに該当するか否かの判断においては、下請代金の額の低さのみならず、下請事業者との間でどのくらい密に価格交渉を行っていたかという交渉のプロセスが重視されます。

密な交渉が行われず、一方的に価格を突き付けることは、買いたたきに該当する恐れがありますので、交渉プロセスに注意を払う必要があります。

どのように交渉をするべきか

どのように交渉をするべきか

では、どのように交渉を行えばよいのでしょうか。

ここからは、交渉にあたって注意すべきことについてご案内いたします。

交渉にあたっての協議が十分かどうかの判断基準

価格設定に関する協議が十分かどうかは、協議の方法・回数・時期・内容などを考慮して、個別事情に応じて判断されます。

そのため、一律にこれを行っておけば大丈夫、という判断基準を設けることはできません。

しかし、価格交渉をする場面はいくつかのパターンに分類できるものと思われます。

そこで、いくつかのパターンを想定して、そのパターンごとにマニュアルを作成して担当部署に周知しておくことで、下請法違反にならないようにある程度対策することができるかもしれません。

下請事業者に新たな製品を発注するとき

下請事業者に新たな製品を発注するとき

価格交渉をする場面としてまず考えられるのは、下請事業者に対して、新たな製品等の発注をお願いするときです。

下請事業者に新たな製品等の発注を依頼するときには、見積もりを依頼することがあるかと思います。

このとき見積もりの前提となる取引条件を明確にするとともに、見積もりから発注までの間に取引条件が変わったなどの場合、親事業者は見積もりを再度作成することを依頼し、下請事業者と再協議するなどの必要があります。

条件が変わっているにもかかわらず、再度の見積もりを依頼せず、製品の発注を依頼すると、価格が適切でなく不当に買いたたかれたということになりかねません。

もっとも、単に単価引き下げのみを目的にして親事業者の要求単価に近づくまで再見積もりを提出させることは、買いたたきに該当するおそれがあります。

価格設定において下請事業者と協議すべき内容について一律の規定はありません。

しかし、下請中小企業振興法に基づく振興基準では、「取引対価は、品質、数量、納期の長短、納入頻度の多寡、代金の支払方法、原材料費、労務費、運送費、保管費等諸経費、市価の動向等の要素を考慮した合理的な算定方法に基づき、下請中小企業の適正な利益を含み、労働時間短縮等、労働条件の改善が可能となるよう、下請事業者及び親事業者が十分に協議して決定するものとする」としております。

この基準に法的な効力まではありませんが、親事業者と下請業者が共栄できるような関係を築くことができるような協力をすることが求められています。

下請事業者に単価の値下げを要請する場合

下請事業者に単価の値下げを要請する場合

下請事業者に対して、今までに発注していた製品等の単価の値下げを要請する場合には、その理由を明確に示して協議することが必要です。

また、その単価の値下げ幅を、値下げを求める理由に照らして、合理的な範囲に留めるべきです。

合理的な単価設定がどのようなものかは、個別の事情によって異なります。

ですが、親事業者が下請事業者に原価低減目標のみを提示して、コスト削減を求めたものの、具体的な貢献は行わずに、下請事業者の努力のみによってコスト削減効果が生じたにも関わらず、どのコスト削減効果を親事業者に還元するべく、価格に反映するよう求めることは、合理的な単価設定とは言えないと考えられます。

下請事業者から単価の値上げを要請された場合

下請事業者から単価の値上げを要請された場合

下請事業者のほうから、単価の値上げを求められることもあるかと思います。

親事業者から単価の値下げを求めるだけでなく、下請事業者から値上げを求められた場合に、これに対応しないときにも、「買いたたき」にあたる可能性があります。

例えば、原材料の価格や燃料費といったコストが高騰していることが明らかな状況において、下請事業者から今までの単価のままで対応することはできないとして単価の値上げを要請されたにもかかわらず、下請事業者と十分に協議せずに一方的にこれまでの単価を据え置くことにより、通常の対価を大きく下回る下請代金を設定するような場合、これは「買いたたき」に当たると思われます。

このように、下請事業者からコスト上昇に基づく単価の値上げを求められた場合には、下請事業者と協議を十分に行い、その事情に応じて、合理的であると考えられる範囲において、その要請に応じる方向で検討することが望ましいです。

もちろん、値上げが必要となる理由が合理的であること、値上げの範囲が合理的であることについては、検討を行う必要があり、無条件に値上げ要請に応じなければならないとするものではありません。

まとめ

まとめ

ここまで、親事業者が下請事業者と価格交渉をする際にやってはいけないこと、注意すべき事項について解説いたしました。

企業経営において、下請法に違反しないかどうかを気にすることは極めて重要です。

しかしながら、下請法に違反しているがどうかを見極めるには、詳細かつ丁寧な専門的判断が必要となります。

正確な専門知識に基づいて判断を行わないと、企業の経営に大きな影響を及ぼすと恐れもありますので、注意が必要です。

下請法についてお悩みの場合、専門としている弁護士に相談することが重要となります。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭
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