こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。

​障がいがあることのみを理由に解雇する行為は、基本的に、「障害者差別禁止」、「合理的配慮義務」などに反し、不当解雇と判断される危険性が高いといえます。合理的配慮を怠った解雇や、配置転換などの代替措置を検討せずに行う解雇は、裁判事例でも違法とされる傾向にあります。

そこで、本コラムでは、企業において、障がい者の解雇を行う際に、注意すべきポイントとして、従業員の障害の内容・程度に応じた配慮の「実施と記録化」、そして適切な解雇要件の遵守が必要である点を解説していきます。

障がいを理由とした解雇は基本的に違法(少なくとも不当解雇のリスクは極めて高いこと)

障がいを理由とした解雇は、「差別」や「合理的配慮不足」の疑いから、企業にとって法的リスクが非常に高い行為です。

なぜならば、法律上、労働者が障害を理由に不利な扱いを受けること、及び、不当な理由による解雇は禁止されているためです。(障害者雇用促進法・労働契約法第16条など)。

したがって、「障がいがある」というだけで解雇する行為は、不当解雇として法的に違法と判断される可能性が非常に高いといえるでしょう。

なぜ障がい者への解雇は特に厳しく制限されるのか?

まず、事業主は、障がい者に対して、「合理的配慮」を提供する義務があり、その対応が不十分であるままに解雇を行うことは許されないということが挙げられます。

また、障がいがある事のみを理由とする解雇は、①客観的に合理的な理由と②社会通念上相当な解雇とは認められないとも考えられます。

判例に見る「不当解雇」になるケースとは?

裁判例においては、障がいを理由に配慮を行わずになされた解雇は、不当解雇と認められる傾向にあります。

他方、障がいとは関係のない部署であったため、能力不足や勤務態度不良などの判断にあたって障がいは考慮されず、当該事由を理由とする解雇は有効であるとした裁判例(東京地判平成26年3月14日)もあり、この裁判例では、障がいのある従業員を解雇するうえで、所属部署の業務内容と障がいの内容に関係があるかどうかが一つの判断事情とされている点が参考となります。

企業が検討すべき対応策とは?

では、障がいのある従業員を解雇せざるを得ない状況になった場合には、どのような点に注意をしたらよいのでしょうか。

この点、障がいのある従業員を解雇するにあたって、当該従業員とトラブルになることを未然に防ぐためには、下記の対策を取ることが有効であると考えられます。

①合理的配慮の実施とその記録

当該従業員の障がいの内容・程度に基づいて、業務環境や勤務配置、業務量の調整などの配慮を行い、それを文書にて記録・証拠化しておくことが重要といえます。

②解雇以外の対応の検討

いきなり解雇の処分を下すのはトラブルが生じるリスクが高いため、配置転換や業務内容の変更、就労支援などを行い、まずは解雇以外の支援策がないか、検討する体制作りをしておくことが重要だといえます。

③解雇要件の遵守

障がいがあることのみを理由とした解雇に問題があることは当然ながら、解雇予告や就業規則との整合、解雇届の提出など、法律の手続きに則った適式な解雇を行うことが重要でしょう。

トラブル予防・対処のために弁護士ができること

障がいのある従業員の解雇にあたり、当該従業員とのトラブルを未然に防ぐ、若しくは、トラブルへ対処するには、法律に精通した弁護士のサポートがあると安心といえます。

弁護士であれば、解雇リスクを未然に防ぐ就業規則のレビューや合理的配慮の制度設計を法的観点からチェックすることが可能です。

また、トラブルが現に発生した場合には、労働審判や裁判を含む手続に、迅速かつ専門的に対処することができます。

さらに、法改正や判例動向に応じた継続的なリスク対策も可能と言えるでしょう。

まとめ

障がいがあることのみを理由とした解雇は、法制度と社会的視点の両面から非常にリスクが高い行為です。合理的配慮の実行、法的要件の遵守、適切な証拠準備の徹底、そして弁護士のサポートを通じた体制強化が企業にとっての安心に繋がります。

この点、弁護士との顧問契約は、トラブル予防だけでなく、緊急時の法的対応、制度設計の強化、組織の信頼構築にも直結いたします。企業が持続的に健全な環境を保つための最善の一手として、顧問弁護士契約の検討をお勧めいたします。

ご相談
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書の添削も特定の弁護士が行います。まずは、一度お気軽にご相談ください。
また、企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。
  ※ 本コラムの内容に関するご質問は、顧問会社様、アネット・Sネット・Jネット・保険ネット・Dネット・介護ネットの各会員様のみ受け付けております。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 渡邉 千晃
弁護士のプロフィールはこちら