法人が破産する場合、大抵のケースでは法人税や消費税、法人事業税などの税金の支払いも滞納しています。本稿では、一般の債権者への配当の有無を決定する側面もあるこれらの租税債権等が、破産手続上どのように扱われるのかについて弁護士が解説します。

破産会社の税金等の滞納

資金繰りが悪化して破産に至る会社の多くは、取引先への支払いや金融機関からの借入だけでなく、法人税、消費税、固定資産税、法人事業税といった税金についてもまた支払いができず、滞納しているケースがほとんどです。

破産手続において、これらの国や自治体に納めるべきお金(租税債権)は、一般の借入金や買掛金とは異なる特別な扱いを受けます。
具体的には、一般の借入金や買掛金よりも、優先して弁済されることが多いのです。

このため、法人が破産手続を行う際、これらの租税債権の滞納金額が多いと、たとえ会社の残り資産(財団)がある程度存在したとしても、租税債権の弁済に優先的に充てられてしまって、一般の債権者には配当が回ってこない、という事態もあり得ます。

つまり、これらの租税債権が破産手続上どのように扱われるのかによって、一般の債権者への配当の有無が決まってくる側面があるということです。

このコラムでは、法人が破産する場合の租税債権の取り扱いについて、破産法上の分類である、

財団債権となるもの
優先的破産債権となるもの
劣後的破産債権となるもの

の3つに整理し、実務上のポイントや法人代表者への影響も含めて解説します。

破産手続における債権の優先順位の基本原則

本題に入る前に、破産手続における債権の優先順位について基本を押さえておきましょう。

法人が破産すると、裁判所によって選任される破産管財人が会社の財産を換価し、債権者に配当します。

しかし、全ての債権者が平等に配当を受けられるわけではありません。

破産法では、次のように、債権に優先順位を設けています。

①財団債権:最も優先される債権で、破産手続によらず随時弁済を受けることができます
②優先的破産債権:破産手続の中で、一般の債権より優先して配当を受けることができる債権です
③一般破産債権:破産手続きの中で、①②に次ぐ順位で配当を受けることができます
④劣後的破産債権:最も優先度の低い債権で、③が全額支払われた後にのみ配当を受けることができます

金融機関からの借入や取引先に対する買掛など、ほとんどの債権は③の「一般破産債権」となりますが、租税債権は「一般破産債権」には分類されず、その性質や発生時期に応じて①「財団債権」、②「優先的破産債権」、④「劣後的破産債権」のいずれかに振り分けられます

つまり、法人破産の場面における税金の取り扱いは、一般の債権とは違って特殊だということです。

財団債権となる租税債権

財団債権とは?

「財団債権」とは、破産手続によらないで、破産財団(管財人が管理する破産会社の財産)から随時、他のあらゆる破産債権よりも優先して弁済を受けることができる権利です。

裁判所で進められる破産手続(配当の実施)を待たずに、管財人の手元にお金があればすぐにでも支払ってもらえることから、最も優先順位が高く、手厚く保護されている債権と言えます。

財団債権となる租税債権の要件

全ての租税債権が財団債権として扱われるわけではありません。

租税債権のうち、財団債権となるのは、破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた租税債権の本税のうち

破産手続開始決定の当時、まだ納期限が到来していないもの
破産手続開始決定の当時、納期限から1年を経過していないもの

です。

「納期限」には、法定納期限(法律が本来の納期限として予定している期限)と具体的納期限(その日までに納付しなければ督促状による督促を受け、10日を経過すると滞納処分を受けることになる期限)がありますが、上記の要件にいう「納期限」とはこのうちの具体的納期限を指します。

また、

■財団債権となる租税債権の延滞税・利子税等
■破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税債権(破産財団の管理、換価及び配当に関する費用に該当するものです)

も、財団債権として扱われます。

実務上のポイント

会社が破産に至る直前は、資金繰りの悪化から法人税、消費税、固定資産税といった税金の支払いが数か月〜半年程度に渡って滞っていることが多いです。

これら直近の滞納分は、上記のとおり全て財団債権に分類されます。

破産管財人は、会社の残り資産を現金化した後、まずは自身の報酬や手続費用を確保し、残ったお金の中からこの財団債権(税金や社会保険料)を支払います。実務上、中小企業の破産では財産が少なく、この財団債権(直近の税金等)を支払うだけで資金が底をついてしまい、残念ながら、一般の取引先には1円も配当されない(異時廃止となる)ケースが多いのが現状です。

優先的破産債権となる租税債権

優先的破産債権とは?

「優先的破産債権」とは、財団債権のように「随時」支払われるわけではなく、裁判所で進められる破産手続(配当の実施)を待たなければならないものの、一般の借入金や買掛金(一般破産債権)よりも優先して配当が受けられる債権です。

優先的破産債権となる租税債権の要件

優先的破産債権となるのは、租税債権のうち、前述の「財団債権」の要件から外れた本税です。

すなわち、破産手続開始決定の当時、すでに納期限から1年を超過している租税債権が優先的破産債権となります。

また、優先的破産債権となる租税債権の延滞税・利子税等のうち、破産手続開始前のものも優先的破産債権となります。

古い滞納税金は、財団債権から優先的破産債権へと優先順位が下がるということですが、これには次のような理由があります。

税務署は、税金の滞納があれば、裁判手続きを経ることなく、会社の財産を差し押さえるなどして強制徴収する強力な権限を持っています。

それにもかかわらず、徴収権者が長年放置して滞納額が膨れ上がったものを、破産手続時に全て優先順位の最も高い財団債権にして優先弁済権を与えてしまうと、取引先など他の一般債権者が配当を受けられる可能性が不当に奪われてしまいます。

そのため、国や自治体が徴収を怠って1年以上放置した古い税金については、一般債権者よりは優先するものの、直近の税金よりは優先順位を下げる(配当手続に回す)ことで、他の一般債権者保護とのバランスを取っているのです。

実務上のポイント

資金繰り悪化が長期間続いており、3年前から滞納し続けている法人税や消費税があったとします。

この場合、直近1年分の滞納は財団債権となりますが、それより古い2年分の滞納は優先的破産債権となります。

財団債権を全額支払ってなお会社に余剰財産がある場合のみ、この優先的破産債権に配当が回ってきます。

このため、優先的破産債権に分類された古い税金は、会社の財産状況によっては全く支払われずに終わることも少なくありません

劣後的破産債権となる租税債権

劣後的破産債権とは?

「劣後的破産債権」とは、全ての一般破産債権(銀行からの借入金や取引先への買掛金など)が全額支払われた後、それでもなお余剰があれば、その段階で初めて配当されるという、最も優先順位の低い債権です。

劣後的破産債権となる租税債権等の要件

租税債権に関連するもののうち、劣後的破産債権となるのは、主に、

破産手続開始後の延滞税・利子税等
加算税(過少申告加算税、無申告加算税、重加算税等)

です。

加算税(過少申告加算税、無申告加算税、重加算税等)については、本税の性質やその発生時期にかかわらず、劣後的破産債権となります。

これらの延滞税や加算税は、法人が期限通りに申告・納付しなかったことに対する行政上の制裁です。

もし、この制裁を一般の債権よりも優先して支払うことになれば、「法人が納税怠ったツケを、なぜか、何の落ち度もない取引先や他の債権者が、配当原資の減少という形で負担させられる」という非常に不公平な事態となってしまいます。

このため、破産手続においては、一般債権者の保護を優先するため、国が課す制裁的な債権は劣後的破産債権として後回しにする建付けとしたのです。

実務上のポイント

法人の破産において、一般債権者に対して100%の配当が行われることは極めて稀です。

従って、劣後的破産債権に対してまで配当が行われる可能性は、実務上、限りなくゼロに近いと言ってよいでしょう。

これらの劣後的破産債権に該当する租税債権は、結局支払われることのないまま、破産手続の終了により、会社の法人格とともに消滅することになります。

法人代表者への影響について

法人破産における租税債権の取り扱いを理解したうえで、多くの代表者が最も不安に感じるのが、「法人が払い切れなかった税金は、代表取締役である自分が個人で払わなければならないのか?」という点です。

原則:代表者個人は支払義務を負わない

結論から言えば、代表者個人は、法人の未払い税金については原則として支払義務を負いません

法人は法律上、代表者個人とは独立した人格(法人格)を持っています。

会社が破産手続を終え、法人格が消滅すれば、財団債権であれ、優先的破産債権であれ、支払い切れずに残った未払いの租税債権も法人格とともに消滅します。

銀行からの借入などで代表者個人が「連帯保証人」になっている場合は、代表者個人が連帯保証人としての支払義務を負いますが、税金については、(納税保証書を差し入れたりしていない限り)連帯保証人になっているということもありません。

このため、代表者個人が自腹で破産会社の税金を肩代わりする法的な義務はありません。

例外:「第二次納税義務」を負う場合

ただし、例外的に、代表者個人が破産会社の滞納税金につき支払義務を負わなければならないケースがあります。

これが、「第二次納税義務」と呼ばれるものです。

第二次納税義務というのは、不当に代表者個人や親族に会社財産を移転(無償譲渡など)して納税を免れようとしたような悪質なケースにおいて、国や自治体などの徴収権者が、財産の移転を受けた者(代表者個人や親族)に対して直接納税するよう請求できるというものです。
(同族会社において不当な事業譲渡等が行われた場合にも適用されることがあります)

法人破産におけるほとんどのケースは、通常の事業失敗による倒産であり、誠実に破産申立を行うものですから、代表者個人にこの第二次納税義務が適用されることはありません。

しかし、「会社の事業が代表者個人や生計を共にする親族に対して無償または不当に低い価格で譲渡された後、元の会社だけを破産させて滞納税金を消滅させた」といった行為があると、この制度の適用によって、破産手続が終了した後も、代表者個人が破産会社の滞納税金を支払わなければならなくなる可能性があります。

税金は国や自治体の存在・活動の根幹を支えるものであり、公平賦課の原則のもと、破産制度を濫用・悪用するような形で税金の支払いを免れることは許されるものではありません。

破産申立前の財産処分には弁護士等の専門家の指導のもと、厳格に対応する必要があります。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、専門チームの弁護士は、各担当分野について知識・経験とも豊富で、大きな強みを持っています。まずは、一度お気軽にご相談ください。

この記事を書いた弁護士:弁護士 田中 智美

法人破産

弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。
平成20年登録後、個人の債務整理にとどまらず、数多くの法人破産の申立てを手掛ける。埼玉県内に本社を有する法人だけでなく、近隣都県の法人の申立てに対応。負債総額、債権者数、従業員数、支店の数などが多数にのぼる大型案件についても実績があり、裁判所の運用や処理にも精通している。