健康志向の高まりやインターネット通販(EC)市場の拡大を背景に、健康食品やサプリメントのビジネスは、いまや大手メーカーだけでなく、中小企業やD2Cブランドを立ち上げるスタートアップ、さらには個人事業主に至るまで、非常に幅広いプレーヤーが参入する一大市場となっています。

健康食品ビジネスの魅力の一つは、参入障壁の低さにあります。医薬品を製造・販売するためには国の厳格な承認や許可が必要となるのに対し、「食品」として販売するのであれば、原則としてそのような薬機法上の承認・許可は不要だからです。

しかし、ここに重大な落とし穴があります。「うちが売っているのは食品だから、薬機法は関係ない」という認識は、法的には全くの誤解です。販売している商品が形式上「食品」や「サプリメント」と表示されていても、その成分や広告での宣伝文句次第で、その商品は薬機法上の「医薬品」とみなされ、国の承認等を受けていない「無承認無許可医薬品」として、刑事罰を伴う厳しい取締りの対象となるのです。

しかも、健康食品を取り巻く規制環境は、令和6年(2024年)に発生した紅麹関連製品による健康被害問題を契機として、かつてないスピードで厳格化が進んでいます。機能性表示食品については、経過措置期間の終了に伴い、令和8年(2026年)9月1日からGMP(適正製造規範)に基づく製造管理が完全義務化されるなど、まさに今、事業者に対応が迫られている局面です。

本コラムでは、健康食品・サプリメントの製造販売やEC販売、広告に携わる事業者の皆様に向けて、「食品」と「医薬品」を分ける法的な境界線(いわゆる食薬区分)、無承認無許可医薬品と判断された場合の重大な帰結、そして事業を守るための実務的な対応策について、詳細に解説いたします。

薬機法に「健康食品」というカテゴリーは存在しない

「食品」と「医薬品」を分ける法律の建付け

まず大前提として押さえておくべきなのは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)には、「健康食品」や「サプリメント」という法律上の製品カテゴリーは存在しないという事実です。これらはあくまで通称・マーケティング上の呼び名に過ぎず、法的にはすべて、原則として一般の「食品」として扱われます。

そして、薬機法第2条第1項は、「医薬品」を、①日本薬局方に収められている物、②人または動物の疾病の診断、治療または予防に使用されることが目的とされている物、③人または動物の身体の構造または機能に影響を及ぼすことが目的とされている物、と定義しています。

ここで重要なのは、医薬品への該当性が、その物の実際の薬理作用の有無ではなく、「使用目的」によって判断されるという点です。つまり、口から摂取する製品が「病気を治す・予防する」ことや「身体の構造や機能に影響を及ぼす」ことを目的としていると判断されれば、たとえパッケージに「食品」と書かれていても、法的には「医薬品」とみなされるのです。

医薬品とみなされた商品が、厚生労働大臣の承認(薬機法第14条)や製造販売業の許可等を受けていなければ、それは「無承認無許可医薬品」です。無承認無許可医薬品は、販売はもちろん、販売目的での製造・輸入・貯蔵・陳列、さらには広告することさえも全面的に禁止されます。

医薬品該当性を判断する「46通知」(食薬区分)

では、行政は具体的にどのような基準で、ある製品が「食品」なのか「医薬品」なのかを判断しているのでしょうか。その実務上の判断基準となっているのが、昭和46年6月1日付けの厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(薬発第476号)、通称「46通知」です。

46通知とその別紙「医薬品の範囲に関する基準」は、半世紀以上にわたり改正を重ねながら、現在でも食薬区分の実務の根幹をなしています。同基準によれば、野菜や果物、調理品など、その外観や形状、社会通念から「明らかに食品と認識される物」(いわゆる明らか食品)は原則として医薬品には該当しませんが、錠剤やカプセル、粉末、ドリンクといった形態の製品については、①成分本質(原材料)、②効能効果の標榜、③形状、④用法用量という要素から、総合的に医薬品該当性が判断されます。

以下、この4つの判断要素を順に見ていきましょう。

判断要素①:成分本質~「専ら医薬品リスト」に載っていないか

第一の関門は、製品に配合されている「成分」そのものです。

厚生労働省は、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」を公表しており、このリストに掲載されている成分(専ら医薬品成分)を含む製品は、たとえ医薬品的な効能効果を一切標榜していなくても、原則としてそれだけで「医薬品」に該当すると判断されます。

このリストには、毒性の強いアルカロイドを含む生薬や、麻薬・向精神薬に相当する成分、医療用医薬品の有効成分に相当する成分などが掲載されています。注意すべきは、海外では一般的な「サプリメント成分」として流通しているものの中にも、日本ではこのリストに掲載され「専ら医薬品」とされている成分(例えば、睡眠サポート成分として海外で人気のメラトニンなど)が少なくないという点です。

海外の原料メーカーやOEM先から「これは海外でサプリとして売られている安全な成分です」と説明されたことを鵜呑みにして商品化してしまうと、成分レベルで無承認医薬品と判断されるおそれがあります。商品企画・原料調達の段階で、必ず日本の食薬区分リストとの照合を行うことが不可欠です。

判断要素②:効能効果の標榜~最大の落とし穴は「広告」にある

実務上、健康食品事業者が最も陥りやすいのが、この「効能効果の標榜」による医薬品該当性です。

配合成分自体には何の問題もない、ありふれた素材を使った製品であっても、その販売に際して「医薬品的な効能効果」を標榜(宣伝・広告)すれば、その製品は「疾病の治療・予防」や「身体の構造・機能への影響」を目的とする物、すなわち医薬品とみなされます。

医薬品的な効能効果とされる典型例は、次のような表現です。

・疾病の治療または予防を目的とする表現:「高血圧が改善する」「糖尿病の予防に」「がんを防ぐ」「関節痛が解消する」「花粉症に効く」など
・身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする表現:「疲労回復」「体力増強」「老化防止」「新陳代謝を高める」「免疫力を強化する」など

一方で、「健康維持」「美容のために」「栄養補給に」といった表現は、原則として医薬品的な効能効果には該当しないとされています。この一線を越えるか否かが、適法な健康食品広告と違法な医薬品広告の分水嶺となります。

そして、極めて重要なのは、標榜の場所は製品のパッケージや容器に限られないという点です。自社サイトやランディングページ(LP)、SNSの投稿、動画、店頭POP、さらにはお客様の体験談・口コミの引用に至るまで、製品の販売に結びつくあらゆる表示物が「標榜」と評価されます。「商品ラベルには何も書いていないから大丈夫」という言い訳は通用せず、LPに書いた一行の宣伝文句によって、商品そのものが無承認医薬品へと転化してしまうのです。

判断要素③:形状~錠剤・カプセルだからといって直ちにアウトではない

かつては、錠剤やカプセルといった「医薬品的な形状」であること自体が、医薬品該当性を推認させる大きな要素とされていました。

しかし、サプリメントの普及という社会実態を踏まえた運用の見直しにより、現在では、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤等の形状であっても、パッケージ等に「食品」である旨を明示していれば、形状のみを理由に医薬品と判断されることはない、という取扱いになっています。

ただし、アンプル形状のように、通常食品には用いられず、消費者に医薬品と誤認させるような特殊な形状を採用した場合は、現在でも原則として医薬品と判断されますので、注意が必要です。

判断要素④:用法用量~「服用」の指定は医薬品の証

最後の要素が、摂取の時期・間隔・量の指定、すなわち用法用量です。

「1日2回、食前に2粒ずつ服用してください」「就寝前に必ずお飲みください」といったように、医薬品と同様の詳細な用法用量を指定・表示することは、消費者にその製品が医薬品的な効果を持つかのような誤認を与えるため、医薬品該当性を基礎づける要素とされます。

他方、過剰摂取を防ぐための「1日2粒を目安にお召し上がりください」といった摂取目安量の表示は、食品として認められています。「服用」ではなく「お召し上がりください」という言葉を使うべきである、というのは健康食品実務の基本中の基本です。

「無承認無許可医薬品」とされた場合の重大な帰結

販売も広告も全面禁止~刑事罰の対象に

上記の判断要素により製品が「医薬品」に該当すると判断された場合、その帰結は極めて重大です。

まず、国の承認を受けていない医薬品を販売し、授与し、または販売目的で製造・輸入・貯蔵・陳列する行為は、薬機法第55条第2項等に違反し、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金(またはその併科)という刑事罰の対象となります。倉庫にストックしてECサイトに掲載した時点で、「販売目的の貯蔵・陳列」として既に違法状態にあるという点に注意が必要です。

また、薬機法第68条は、承認前の医薬品等について、その名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告を禁止しています。この規定の主語は「何人も」とされており、製造販売元だけでなく、広告代理店、ECモールの出店者、アフィリエイター、インフルエンサーなど、広告に関与したすべての者が規制対象となります。違反した場合には、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金(またはその併科)が科され得ます。

さらに、刑事罰とは別に、行政による立入検査、違反品の廃棄・回収命令、業務停止などの行政処分や行政指導のリスクもあります。近時は、行政が外部専門機関に委託したネットパトロールによって、インターネット上の違法な健康食品広告が組織的に監視されており、「小規模な事業者だから見つからない」という時代は完全に終わっています。実際に、健康食品に医薬品成分が混入していた事案や、痩身効果・疾病治療効果を標榜して未承認医薬品を販売した事案では、経営者や販売担当者が逮捕・書類送検される事例が繰り返し発生しています。

課徴金制度との関係~「対象外」でも決して安心できない理由

令和元年の薬機法改正により導入され、令和3年8月から施行されている「課徴金制度」についても触れておきましょう。この制度は、医薬品等に関する虚偽・誇大広告(薬機法第66条第1項)の違反者に対し、違反期間中の対象商品の売上額の4.5%という高額な課徴金の納付を命じるものです。

ここで、「未承認医薬品の広告(第68条違反)は課徴金の対象になっていないから、健康食品の広告違反は大したことがない」と誤解している方が時折いらっしゃいますが、これは全くの誤りです。未承認医薬品の販売や広告が課徴金の対象から外されたのは、違反が軽微だからではありません。未承認医薬品の取引はその存在自体が全面的に違法であり、売上の4.5%を徴収して残りの収益の保持を認めるような制度設計がそもそもなじまない、という理由によるものです。つまり、無承認無許可医薬品の販売・広告は、課徴金による金銭的制裁で済まされる段階を超えた、直接刑事罰で臨むべき重大違反と位置づけられているのです。

また、健康食品の広告であっても、あたかも国が効果を認めた医薬品であるかのように誤認させる表示等が虚偽・誇大広告(第66条第1項違反)と評価されれば、課徴金納付命令の対象となり得ます。加えて、健康増進法の誇大表示の禁止や、景品表示法の優良誤認表示の禁止といった他の法律による規制・課徴金制度も重畳的に適用されるため、健康食品の広告は多方面からの法的リスクにさらされていることを認識する必要があります。

保健機能食品制度の活用と限界

機能性を適法に表示できる3つの制度

「では、健康食品では機能性を一切うたえないのか」というと、そうではありません。国は、一定の要件を満たした食品についてのみ、例外的に機能性の表示を認める「保健機能食品」の制度を設けています。保健機能食品には、次の3類型があります。

・特定保健用食品(トクホ):製品ごとに有効性・安全性の審査を受け、消費者庁長官の許可を得て、「コレステロールの吸収を抑える」等の特定の保健の用途を表示できる食品
・栄養機能食品:国が定めた規格基準に適合するビタミン・ミネラル等について、定められた栄養機能(例:「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」)を表示できる食品(個別の許可・届出は不要)
・機能性表示食品:事業者の責任において、科学的根拠に基づく機能性を消費者庁長官への届出により表示できる食品(平成27年開始)

特に機能性表示食品は、トクホに比べて時間・コストの負担が小さいことから、中小事業者の商品開発でも広く活用されています。

「届出すれば何でも言える」わけではない~制度の限界

もっとも、保健機能食品の制度を利用していれば安心、というわけでは決してありません。

第一に、保健機能食品であっても、使用する成分が前述の「専ら医薬品リスト」に該当しないことが大前提です。

第二に、保健機能食品はあくまで「食品」ですから、特定の疾病の治療効果や予防効果を標榜することは、いかなる場合も許されません。「血圧が高めの方の健康維持をサポートする」という届出表示は適法でも、「高血圧が治る」「降圧剤の代わりになる」と広告すれば、その瞬間に未承認医薬品の広告に転化します。

第三に、広告で表示できるのは、許可・届出された機能性の範囲内に限られます。届出表示を切り貼りしたり、都合よく言い換えて誇張したりすれば、薬機法・健康増進法・景品表示法の違反リスクが生じます。

紅麹問題で激変した規制環境~令和8年9月のGMP完全義務化

保健機能食品、とりわけ機能性表示食品をめぐる規制環境は、令和6年(2024年)に紅麹原料を使用したサプリメントによる深刻な健康被害が社会問題化したことを受けて、大きく変わりました。

具体的には、令和6年9月1日から、機能性表示食品等の事業者に対し、医師から寄せられた健康被害情報を行政に速やかに提供することが法令上義務化されたほか、届出内容の自己点検・年1回の報告などの新たなルールが順次施行されています。

そして、経過措置期間の終了に伴い、令和8年(2026年)9月1日からは、錠剤・カプセル剤等のサプリメント形状の機能性表示食品について、GMP(適正製造規範)に基づく製造・品質管理が完全に義務化されます。本コラム執筆時点(令和8年8月)は、まさにその経過措置期限の直前であり、対応が完了していない事業者は、届出の撤回や販売中止に追い込まれかねない、待ったなしの状況にあります。

自社が製造委託しているOEM工場がGMPに対応できているか、健康被害情報の収集・報告体制が構築できているか、届出資料と現実の製造実態・広告表現が一致しているか、早急な総点検をお勧めいたします。

事業者が取るべき実務的対応策

これまで見てきたリスクを踏まえ、健康食品・サプリメント事業を適法かつ持続的に運営するために、事業者が取るべき対応策を3点に整理します。

1.商品企画・原料調達段階での成分チェックの徹底

配合を予定しているすべての成分について、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」等との照合を行い、食薬区分上の位置づけを確認してください。特に海外原料を使用する場合は、原料メーカーや輸入商社の説明を鵜呑みにせず、自社の責任で(必要に応じて行政や専門家に確認しながら)判断することが重要です。成分レベルの違反は、広告表現の修正では治癒できない致命傷となります。

2.広告表現の社内チェック体制の構築

LP、ECサイト、SNS、動画、同梱チラシ、体験談の引用など、消費者の目に触れるすべての表示物について、公開前に薬機法の観点からチェックするフローを設けてください。疾病の治療・予防や身体機能の増強を明示・暗示する表現を排除し、「健康維持」「栄養補給」等の食品として許容される範囲、あるいは届出等を行った機能性の範囲内に表現をとどめることが鉄則です。アフィリエイターやインフルエンサー等の外部委託先に対しても、NG表現のガイドラインを示し、定期的にモニタリングする管理体制が求められます。

3.制度と専門家の適切な活用

機能性をうたいたいのであれば、安易な「言い逃れ表現」に頼るのではなく、機能性表示食品等の制度を正面から活用することを検討すべきです。また、食薬区分や広告表現の判断に迷った場合には、都道府県の薬務主管課への事前相談や、薬機法に精通した弁護士等によるリーガルチェックを活用することが、結果的に最も低コストなリスク回避策となります。

まとめ

健康食品・サプリメントのビジネスは、許認可なしに参入できる手軽さの裏側で、薬機法の「無承認無許可医薬品」規制という強力な地雷源の上に成り立っています。「食品」と「医薬品」を分けるのは、成分本質、効能効果の標榜、形状、用法用量という46通知の判断基準であり、とりわけ広告における効能効果の標榜は、ありふれた食品を一瞬にして違法な医薬品へと転化させる最大のリスク要因です。

違反した場合には、刑事罰、行政処分、課徴金、そして製品回収や社名公表による信用失墜と、事業の存続を揺るがす重大な帰結が待っています。さらに、紅麹問題を契機とした規制強化により、機能性表示食品には健康被害情報の報告体制やGMP対応という新たな義務も課され、健康食品ビジネスに求められるコンプライアンスの水準は年々高まっています。

法規制を正しく理解し、成分・広告・品質管理の三位一体のチェック体制を構築することは、単なるリスク回避にとどまらず、消費者からの信頼を獲得し、ブランドを長期的に成長させるための投資に他なりません。現在の商品設計や広告表現に少しでも不安がある場合には、手遅れになる前に、薬機法に精通した弁護士による詳細なリーガルチェックを受けることを強くお勧めいたします。

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この記事を書いた弁護士:弁護士 遠藤吏恭

薬機法

中央大学法科大学院・埼玉工業大学での講師活動、法テラス民事法律扶助審査委員・埼玉県意見表明等支援員としての公的活動を通じ、幅広い法的知見を持って依頼人の権利と事業を守る。公益社団法人埼玉県暴力追放・薬物乱用防止センター主催の不当要求防止責任者講習でも講師を務め、民事介入暴力対策委員会・子どもの権利委員会所属。