ある飼料販売業者が養鶏業者に飼料(魚粉ミール)を販売したのですが、その飼料の中になめし皮粉が混入していたため、廃鶏数が増えた結果、産卵量も減少してしまったという事案です。

飼料販売業者からの売買代金請求に対し、養鶏業者は債務不履行に基づく損害賠償請求権で相殺する旨の主張をしました。

このケースでの飼料販売業者は、飼料を自前で製造している会社ではなく、他の製造業者または販売業者から飼料を買い受けて販売するという業態を取っていました。
そのため、自社が販売しようとする飼料に有害飼料が含まれているかどうかを確認しようとすれば、県種畜場等の専門家の分析鑑定を依頼し、その結果を待つしかないという状態でした。

裁判所は、上記のような業態に着目し、「飼料販売業者になめし皮粉が混入しているか否かを専門家の分析鑑定によって確認すべきという高度の注意義務を負わせる根拠となる法規や商慣習の存在は認められず、肉眼によっても混入の有無を確認できないので、売主たる飼料販売業者に注意義務違反(過失)はない」と判断して、養鶏業者の主張を退けました。

なお、飼料の製造を自社で手掛けている場合や、飼料販売業者に通常の程度の注意義務違反がある場合(つまり、飼料販売業者として、通常の注意をしていれば、有害物質の混入があることを予見できる場合)は、飼料販売業者に過失が認められ、養鶏業者に対し、損害賠償責任を負担しなければならなくなるのは当然です。