
2026年(令和8年)4月1日から、新しい区分所有法が施行されました。それに伴い、標準管理規約の改正もなされましたが、この改正は区分所有法等の法改正を受けたものだけではなく、社会情勢等を踏まえた見直しもされています。そこで今回は社会情勢等による変更部分に注目した標準管理規約改正のコメントなどについて、概要を解説していきます。
社会情勢の変化に伴う標準管理規約(単棟型)のコメント等改正について

マンションの管理規約とは
マンションは、複数の区分所有者(組合員)が関わるものであり、その管理維持等のルールとして、区分所有法だけではなく、各マンションの実情に応じて、各々のマンション管理規約に基づいて行われています。
多くのマンション管理組合では、国交省が公開するマンション標準管理規約(標準管理規約)を参考にし、それぞれのマンション管理規約を策定しているものと思います。
区分所有法等のマンション管理等についての法規は時代の流れと共に改正されますが、法規だけではなく社会情勢等も変わってきます。そこで、標準管理規約は社会情勢等によっても見直されることがあるのです。また、国交省が標準管理規約についての趣旨や解釈、注意点や複数あり得る規定の仕方について例文などを示しているのが「コメント」です。
令和7年10月17日には、標準管理規約及びそのコメントの改正がされましたが、この標準管理規約の改正は、社会情勢等による変化も考慮したものでした。
社会情勢等を踏まえた標準管理規約の改正内容

管理組合役員に関して(理事の代行者)
令和7年の標準管理規約改定前は、標準管理規約についての第53条(理事会の会議及び議事)コメントにおいて「理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、原則として理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。」とのみ表記していました。これに対し、改定後のコメントでは「理事の負担感を軽減する観点から、理事が職務代行者を定め、理事本人が理事会に出席できない場合において、その職務代行者に理事会への出席を委ねることを認めることも考えられる。」として職務代行者の出席を認める旨及び職務代行者として選任可能な者の範囲を規約の明文の規定で定めることが必要であるものの「代理出席を認める」規約の規定は有効であるとしています。
管理組合役員の欠格事由について
理事などの役員の欠格事由に係る規定については、会社法や一般社団法人法などでも法改正がされており、「精神の機能の障害により認知、判断、意思疎通を適切に行うことができないこと」が外されました。近時、認知症、知的障害その他の精神上の障害がある人々や高齢者などの社会的弱者も社会の一員として尊重されるべきとされています。
そこで成年被後見人、被保佐人を「精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」として役員の欠格事由としていたところを標準規約改正によって、削除しています。
管理組合役員等の本人確認

令和7年7月、区分所有者でない者が区分所有者になりすまして、マンションの大規模修繕委員会に参加していたという事件が発覚したことを踏まえ、管理組合役員、専門委員就任時の本人確認についても標準管理規約にコメントが追加されました。
同コメント(35条)では「マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等の顔写真付きの身分証明書の提示を求める等の方法により本人確認を行うことが考えられる。」「マンション管理に係る専門知識を有する外部の専門家を選任する場合は、顔写真付きの身分証明書に加え、専門家の資格に係る身分証明書の提示を求めることが考えられる。」とし、専門委員会についてのコメント(55条)でも「専門委員候補者の本人確認を適切に実施することが有効と考えられる。」としています。
管理組合が取り組むべき防災関係業務
マンションが安全な居住環境であるというためには、マンションの管理維持につき消防関連の法令を遵守し、必要な防災対策をすることが求められます。
令和7年の標準規約改正では「防災に関する業務」について、「平時から管理組合や区分所有者において進めるべき防災対策の取組である防災マニュアルの作成・周知、防災訓練の実施、防災情報の収集・周知、防災用名簿の作成、防災物資等の備蓄等が考えられる」 として業務の具体例が示されたうえで、「これらの取組については、管理組合が担うのではなく、別に防災活動に取り組む組織を結成した上で、その組織が主導して取り組むことも考えられる」といったコメントが追加されました。
喫煙に関するルール作り

標準管理規約のコメントでは、マンション内の「喫煙に関するルール」についても使用細則として定めることができるかどうかを明確化するため、考え方が追記されています。
喫煙は世界保健機関 (WHO) の国際がん研究機関 (IARC) においても発がんが認められ、喫煙ががんや妊娠への深刻な影響があることは指摘されています。喫煙に対する意識は、マンションができ始めた時代から大きく変化しており、受動喫煙による健康被害もあることが厚生労働省の発表でも明らかにされています。
そこで、社会における共有空間の中で「望まない受動喫煙」をなくすことの重要性に注目され、有害物質による被害を受けることなく健康的な生活を送ることは、人にとっての重要な権利であるとして、2002(平成14)年8月に、健康増進法(平成14年法律第103号) という法律が制定されました。
受動喫煙については、明文が設けられており、「国及び地方公共団体は、望まない受動喫煙が生じないよう、受動喫煙に関する知識の普及、受動喫煙の防止に関する意識の啓発、受動喫煙の防止に必要な環境の整備その他の受動喫煙を防止するための措置を総合的かつ効果的に推進するよう努めなければならない」 (健康増進法25条)、「何人も、特定施設及び旅客運送事業自動車等(特定施設等)の29条第1項に規定する喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」(同法27条)とされています。
また、国や地方公共団体だけではなく、健康増進法の目的を実現するために、日本に住む一人ひとりの健康を実現するための国民健康づくりのための運動として、「健康日本21」 も推進されています。
マンションは、エントランス、エレベーター、階段、廊下など、区分所有者に限らず多くの人々に利用されるスペースがあります。専有部分や専用使用権が設定されているバルコニーやベランダについても、居住者が何の制約をも受けることなく利用できるスペースではなく、これらの利用にあたっては、やはり他の区分所有者や居住者への配慮も必要であり、標準規約でも、令和7年改正によって、喫煙の取扱いについて指摘されるようになりました。
このような対応をするためには、使用細則において、「望まない受動喫煙」をなくすために、喫煙に関するルールを設定する必要があるとされ(18条コメント)、「喫煙に関しては、共用部分においてそれを認める、認めない等の規定、認める場合におけるその場所など遵守すべき事項、これらの事項に違反した者に対する措置等について、使用細則で定めることは可能である」と明記しています。
喫煙対応についても「他の区分所有者及び占有者との円滑な共同生活を維持する観点から、周囲の状況に配慮した方法で喫煙することが望ましく、使用細則において、そうした規定を盛り込むことも考えられる」とも指摘されているところです。
共用部分において、喫煙を認めるか否か、認めるとして守るべき事項、喫煙についての定めがある場合に規約に反したときの措置など、また専有部分についても周囲の状況に配慮した方法で喫煙することが望ましく、必要な規定を盛り込むということが考えられると指摘されています。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来35年の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
企業が直面する様々な法律問題については、各分野を専門に担当する弁護士が対応し、契約書レビューも特定の弁護士が行います。このような専門性により、企業法務において大きな強みを持っています。企業法務を得意とする法律事務所をお探しの場合、ぜひ、当事務所との顧問契約をご検討ください。
※ 本コラムの内容に関するご質問は、顧問会社様、アネット・Sネット・Jネット・保険ネット・Dネット・介護ネットの各会員様のみ受け付けております。
この記事を書いた弁護士:弁護士 相川 一ゑ
マンション法
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所所属、埼玉弁護士会所属の弁護士。平成21年登録。
令和4年、管理業務主任者試験及びマンション管理士試験に合格、同年よりマンション管理士登録。数多くのマンション管理組合から依頼を受け、管理費等請求・区分所有法に基づく競売事件などを担当。






